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至誠一貫
第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十四 〜袁本初〜
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に目が行っているのも、荀ケという存在が影響しているのは確かだ。
 軍師ならば、策を講じるのみならず、必要があれば主君を諫めるぐらいでも良い筈。
 だが、荀ケにはそんな素振りはなく、ただ袁紹を煽り立てているだけにしか見えぬ。
 顔良には気の毒だが、荀ケの存在は、今の袁紹に取っては利よりも害が勝っている。
 袁紹が苦しむのは統治者たる資質の問題、それは良い。
 だが、支配される側、庶人の苦しみはそのまま、悪化するばかり。
 手を貸す訳にはいかぬが、少なくとも眼を向けさせる事には成功したのだ、また元の木阿弥では意味がない。
 ……ならば、少しばかり手を出すとするか。
「顔良。此処にはおらぬが、城外は探させたのか?」
「いえ。こんな時間で城門も閉まっていますし、それに荀ケさん一人でとは考えられませんから」
「そうかな? 奴は頭が切れる、顔良がそう考える事を見抜き、敢えて城外に出た可能性もあると思うが?」
 私がそう言うと、顔良はあっという顔をした。
「そ、そうですね! ご助言、感謝します。それでは、失礼します!」
 そう言い残し、慌てて飛び出して行った。
「お兄さん。わざと顔良さんに嘘を教えましたね?」
「ふっ、流石風、見抜いていたか」
「でも歳三さん。一体、どうなさるおつもりですか?」
「……少しばかり、灸を据えてやろうと思ってな。さて、まずは荀ケを捕らえねばならんな」
 私は、腰を上げた。


 翌日の早朝。
 城門が開かれるのと同時に、小さな影が素早く、城外へと走り出た。
「フフフ、ほんっと馬鹿ばっかよね。夜中に城外になんて出る訳ないのにね」
 得意満面でそう呟きながら、荀ケが此方に向かってきた。
「よし。手筈通りに動くのだ。良いな?」
「応!」
「なぁ、土方さん。本当にいいのか、こんな事やっちまって?」
 棄民姿に戻った何平が、呆れたように言う。
「構わんさ」
「まぁ、面白そうだからいいけどさ。んじゃ、ちょっくらやってくるか」
 そして、荀ケの前に、男の兵士が扮した盗賊が立ち塞がる。
「な、何よあんた達!」
「へっへっへ、おい野郎ども!」
 合図と共に、他の兵が飛び出す。
 皆、盗賊に扮しているのと、付け髭などでわざとむさ苦しい格好をしている。
「い、いや……。ちょ、ちょっと来ないでよ……」
「かかれっ!」
 合図と共に、兵達は荀ケに群がり、あっという間に縛り上げた。
「捕まえたか?」
「へい、お頭!」
 そこに姿を見せた何平、芝居が板についているな。
 ……兵らも、随分と乗り気なのは、少々意外であったが。
「あ、あんた達! 私を誰だか知っているのでしょうね?」
「あ〜? 袁紹んとこの、自称軍師様だろ?」
「な、何ですって……?」
 何平は不敵に笑って、荀ケを小突く。
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