第二部 文化祭
Kirito's episode 記憶
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
こった。
「和人ー、寝る前は歯磨き」
「もう磨いたよ!」
和人はテレビでバラエティー番組を見て笑いながら言った。
「親父はまだ帰ってきてないの?」
「親父って……せめて父さん、とか言えないの? もうとっくに帰ってきてるわよ」
「あ、ほんとだ。おかえりオトン」
和人は父親を一瞥し、すぐ様テレビに向き直った。
「……ただいま、和人。なんだオトンって」
「母さんが"親父"言うなって」
「なら母さんは"オカン"だな」
父親はからからと笑い、和人の座るソファーにどかっと腰を下ろした。母親は盛大な溜め息を吐いた。
──その時。
ダン、ダン、と玄関扉を強く叩く音がした。和人は首を傾げて言う。
「なに? こんな時間に。アリス達かな?」
叩く音はどんどん大きくなる。
「……まさか」
母親が口に両手を当てた。その顔は真っ青だ。
「……まさか、家にまで来るなんて……!」
「なあ母さん、親父、なんの話?」
「お前は奥に隠れてろ!」
父親が叫ぶ。手には愛用している片手直剣が握られていた。
「え、なんで」
「いいから早く!」
和人は少し驚いたように眼を見開くと、奥へ引っ込んだ。
──扉が壊される音がした。
「……きっと、?ラフコフ?ね」
母親が呟くように、しかし確かな声で言う。
殺人集団?笑う棺桶(ラフィン・コフィン)?は近年、それらを妨害する者達の家を襲い、何百人にものぼる人々の殺戮に明け暮れている。遂に和人たちの家もターゲットにされたというわけだ。
「あの子だけは、絶対に守ろう」
父親は力強く囁いた。
多勢に無勢、苦戦した二人だが、なんとか数人を無力化することに成功した。
しかし──。
「あなた、後ろ!」
「えっ……」
母親の叫びに、父親は後ろを振り返った。
犯罪者が嘲っていた。
父親の血と、母親の悲鳴と、殺人者の嗤い声が混濁し──。
父親はその場に崩れ落ちた。
固く閉じられた瞼は、もう二度と開くことはなかった。
やがて、その身が四散した。
「嘘でしょ……」
母親もまた、絶望に崩れ落ちる。震える手で、目の前で砕け散った夫の剣を取る。
仇に剣を向けた、その瞬間──。
「……親父?」
リビングの扉から、あまりに大きなショックを隠せず、黒い瞳を揺らして立ち尽くす少年がいた。
「和人! こっちに来ては駄目。今すぐ逃げなさい!」
母親が叫んだ。
殺人者が嘲笑し、和人に向かって自らのナイフの刃先を向け、突進する。しかし和人は、ただ呆然と立ちつくすばかり。
母親は、今は亡き夫の言葉を思い出した。
──あの子だけは、絶
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ