第二部 文化祭
Kirito's episode 記憶
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当時の和人は、悪戯ややんちゃで両親をよく困らせた。しかし両親はそんな彼を煩わしく思うこともなく、ただただ幸せに暮らしていた。
「やった!」
キッチンから和人の歓声が聞こえる。
──またなにかやっているのか。和人の母親は溜め息を吐くと、持っていた洗濯物をその場に置き、キッチンへ急いだ。
「あっ、母さん見てくれよ!」
和人が嬉しそうに指差したのは、積み上がった缶詰め。棚にしまってあるものを、和人はわざわざぶちまけたというわけだ。
「もう、悪戯しちゃ駄目だって言ってるでしょう?」
母親は和人の頭を軽く小突いた。
「悪戯じゃないよ。遊んでるんだ」
「言い訳にもなってないわよ」
「ちぇっ……」
「ほら……いい子だから、ちゃんと直しなさい」
「はいはいっと……」
──これが6歳児の喋り方か。きっと父親に似たのだろう。
と、家の門前から、幼くも凛とした声が飛んでくる。
「カズー! 一緒に遊びましょう!」
和人の友人、アリス・ツーベルクだ。和人は嬉しそうに黒い瞳を大きく開き、玄関先まで走り出した。
「見てよ、カズ! ユージオがお花をくれたの!」
ユージオというのは、これまた和人の友人だ。和人はニヤリと笑う。
「へぇ〜。ほうほう、ふ〜ん」
「な、なんだよカズ」
「いやぁ、なんでもないよ?うん」
どうやら、最近の子供は随分ませているようだ。──いや、和人が少し大人びすぎているのか。
「カズ、早く準備して。今から公園に行くんだけど、ついてきなさいよね」
アリスが楽しそうに笑っている。
そう、この頃は楽しかった。みんな笑っていた。
この後起こる悲劇のことも未だ知らずに──。
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「えっ……母さん、今日はお仕事行かないの?」
「うん。休み摂っちゃった」
和人の両親は、仕事ではないが犯罪組織の殲滅をしている。最近は?笑う棺桶(ラフィン・コフィン)?をはじめとする犯罪・殺人集団が増えてきたので、それらを徹底的に潰していっているのだ。両親共に剣の腕が立つ為、今までは難なく行うことができていた。
しかし近頃、犠牲者が大幅に増えた。犯罪集団も力をつけてきていて、殲滅に向かっても返り討ちにされてしまうことが多くなってきた。このままでは、いつ和人を置いて旅立ってしまうかもわからない。だから今日は、1日ゆっくり休むことにした。和人と過ごす時間を、少しでも紡いでいけるように。
──事件はその晩に起
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