巻乃一 アフロ店長と割烹と料亭荒らし
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奈子に伝言をことづけると精米し終えた新米を升ですくい袋に詰め、テーブル の上に置いたところで近くにある長いすに腰かけ一息ついていた。
彼は細い顔つきにまばらなひげ、
そして細身だが体格のいい体つきを紺の作務衣で包んでいるが…何より彼を印象づけているのは、全長20pはあるアフロ。
それゆえに彼を「アフロ店長」と呼ぶ人もあり、町の皆からの人気もかなりのものである。
幸四郎は、長いすに置いた盆に乗っている急須に手を伸ばし、ぬるめの緑茶を自分の湯呑みに並々と淹れるや一気に飲み干し「ふぃ〜」と軽く息をつき、そのまま席を立ち店の方へと向かった。
そして奥の方から桐の箱を持ってくると、厳選コシヒカリを箱に詰め店のとなりに止めてあるワゴン車のリアシートに載せ、運転席に乗り込んだ。
「店長、僕は店番に回ります。後は任せて下さい。」
「ふむ、そうしてくれると助かる…では拓郎、後を任せたぞ!」
「はい、まかせて下さい!」
「お父さん、気をつけてね。」
「心配すンな美奈子、ちゃんと帰ってくるから。…あ、そうそう、それと昼飯はおにぎりに卵焼きで頼むわ、あとたくあんもつけてね。」
「卵焼きね、わかったわ。」
幸四郎は美奈子と 店員の佐原 拓郎に店を任せ、一路割烹へとワゴン車を走らせた。
さぁ急がねば…女将さんが首を長くして待っているはずだ。
幸四郎ははやる気持ちを抑えて、割烹へと向かう。
幸四郎の店から5分の一等地、そこに白亜の壁が美しい割烹「白糸」は静かなたたずまいを見せている。
そこの裏口で幸四郎は割烹の女将…猪俣 勝美に精米されつやつやに輝く厳選コシヒカリを手渡した。
幸四郎本人の手により厳選され精米した新米は味や香りが非常によく、炊き込みご飯にはもちろん赤飯やおこわにもピッタリの、まさに神業の逸品なのである。
「女将さん、これが今年の新米…厳選コシヒカリです。どうぞ。」
「これはこれは、本当にすいません。…あ、ところで田村さん、実はご相談がございまして。」
「相談? 」
「はい…ここ数ヶ月の間に起こっている料亭荒らしの事は、ご存じだと思いますが。」
「あぁ、知ってますよ。確か、深夜閉店した料亭や居酒屋を狙っては厨房に入り込んで、食材を盗んでいく悪質な奴だと聞いています。」
その話を聞いて、幸四郎は「やはりな…。」と心を痛めていた。
そう、実は彼の得意先の料亭や小料理屋でも同じ被害にあったと聞いており、その対策に頭が痛いと店の主人達はぼやいていたのだ。
しかも、料亭荒らしは人間ではないとの噂もあり各料亭や小料理屋も警戒を強め、中には監視カメラを大枚はたいて購入し、24時間厨房を監視する神経質な店まで出る始末である。
「えぇ、それで田村さんはご先祖様が偉大な武者で、かなりの実力者だと聞いています。その料亭
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