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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第12話 「時空のたもと」
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気を取られているうちに、だ」

 ザ○の連中を諦めた。
 そうだ。総司令長官とはそういうものだ。損害を一々気にしていては、勤まらん。
 そういうものだ。
 だがわしは、どうしても連中の動きを目が追ってしまう。
 連中は装甲擲弾兵なのだから。

「よしっ!!」

 思わず、声が出た。
 巧みに敵の攻撃を避けつつ、近づいていった連中が上手い位置についた。
 そうだ。その位置ならやれる。やれるのだ。
 だがこれで連中は戻ってはこれんだろう。間に合ってくれればいいが……。

 ■第四次イゼルローン攻防戦 アルトゥル・フォン・キルシュバオム中尉■

 近づくにつれ、敵が増える。
 ふっ、私は何を当たり前の事を思っているのだ。

「ええい。邪魔だぁ」

 コックピットの中で叫ぶ。
 ついてきた連中もなんとか、持っているようだな。
 しかしもういい。ここまででいい。

「お前達は、もう戻れ。後は私一人でいい」
「中尉」
「命令だ。戻れ」
「――ご武運を」
「ああ」

 連中が戻っていく。
 そうだ。それでいい。
 あいつらはイゼルローンまで、帰れるだろう。
 いや、そこまでは持たんでも、どこかの空母に拾ってもらえる。
 星が光っている。
 容赦なく叩きつけられるビームを避ける。
背中につけたレーザー水爆弾頭を構えた。

「成すべき事を為す。ただそれだけだ」

 喉が鳴る。
 指先が震えた。

「喰らえ」

 思わぬ叫びが、喉から飛び出た。
 一筋の光が叛徒の群れを貫いた。
 一瞬の後、爆発が巻き起こる。
 彼らの叫びが私の元まで、届いてくるかのような幻聴を、聞いたような気がした。
 振り返った。
 イゼルローンが遠い。
 流体金属が戦火を映し出して煌いている。
 美しい。
 そう思う。

「もう、あそこには戻れぬな」

 見上げれば、叛徒どもの艦隊が混乱していた。
 私はここだ。
 ここにいる。
 敵を取ろうとは思わんのかっ!!
 それとも、そんな事すら思いつかぬほど、混乱しているのか!!

「不甲斐ない奴らだ!! 私はここにいるのだ。貴様らの敵がいるのだ」
「キルシュバオム中尉。そんなに喚くな。さっさと来い」

 通信に耳を澄ませば、装甲擲弾兵の強襲上陸艇がすぐ近くまで、来ていた。

「さっさと来い。総司令長官閣下はトール・ハンマーを撃つおつもりだ。巻き込まれるぞ」

 ■イゼルローン要塞 グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー■

 モニター越しに広がる爆発。
 叛徒どもの艦隊。
 その中心近くで、爆発が起こった。
 混乱している。

「今だ。全艦隊を下げよ。トール・ハンマー発射用意」

 あのザ○も巻き込ま
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