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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第12話 「時空のたもと」
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はないが、ワルキューレよりも高出力のレーザーを手に持ち。敵機を撃ち抜く。叛徒どもは、我々の存在に戸惑っているようにも思える。
 味方の戦艦の陰から駆け抜け、隙を狙い打撃を与えるのだ。
 戦場は混乱を極めている。
 敵も味方も入り乱れ、トールハンマーを撃つことすら出来ない。
 混戦。
 すぐ目の前に敵戦艦が迫っていた。
 一キロを越える巨体に撃ち込む。狙いをつける必要さえない。
 どこを狙っても敵に当たる。

「中尉」

 部下の悲鳴に、レーダーの反応。
 後ろかっ。
 急上昇しつつ、敵機に銃を向ける。

「ふんっ。背後を撃てぬとでも思っていたのか?」

 敵スパルタニアンとは違い、ザ○は自由に狙いを付けられるのだ。
 爆散してゆく敵機を見ながら、そう小声で漏らした。
 だがエネルギーがあと少ししかない。

「キルシュバオム隊は近くにいる空母に戻れ、補給を行う」
「了解」

 ヴェヒター曹長に続いて、他の者も続く。
 五機のザ○が格納庫に入ると、それだけで圧迫感がある。

「燃料補給と銃のエネルギーパックも交換しておいてくれ」
「他の者は、今のうちに飯でも食っておけ」

 メカニックには補給を、部下には飯を。指示する。
 どちらも補給する事には変わりがない。飯かエネルギーかの違いだけだ。

「キルシュバオム中尉。凄いですね。戦艦1。巡洋艦2。スパルタニアン5ですよ」
「わたしが凄いのではない。ザ○が凄いのだ。しかし褒められるのも悪くない。ありがとう」

 ダメだ。あのような物言いをするべきではなかった。
 悪気はなかったであろう相手だ。しかもメカニックを敵に回してどうするというのだ。
 私もまだ、未熟ということか。

「気にせんでいい。初陣の兵士とは余裕のないものだ」
「はっ」

 年配のメカニックがそう言って、声を掛けてきた。
 そう言ってもらえると、少しは気が楽になる。放り投げられた飲み物に口をつける。
 その時初めて、喉が渇いていたことに気づいた。

「俺もこの年になって、こんなごついやつを弄れるかと思うと、嬉しくってな〜」

 ザ○を見上げながら、そんな事を言う。
 その言葉に少しだけ笑った。

「ひでえ混戦だ」

 ついさっき入ってきたばかりの、ワルキューレのパイロットが叫んだ。

「上の連中はうまく行ってると言ってたが」
「連中、どこ見て言ってやがるんだ」
「艦隊運動そのものは、うまくいってるからよ〜」

 戦闘の推移そのものは帝国軍に有利に運んでいる。確かに上の連中の言うとおり、上手く行っているのだろう。しかし我々から見れば、混戦しているとしか思えない。
 目の前に敵の戦艦が横切っていくのだから……。
 そう目と鼻の先だ。

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