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久遠の神話
第五十話 政府の判断その十五
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「だからこそです」
「神話の頃から仰り、そして戦わせ続けていますが」
「どうしてもです」
「私はそれなら」
「それならですね」
「掛け替えのない貴女を止めます」
 放たれた矢は的の中央を射抜き続けていた。そこには寸分の迷いはない、だがそれでもこう言ったのだった。
「今度こそは」
「貴女も諦めることはしないですか」
「貴女と同じですから」
 だからだというのだ。
「私も決してです」
「私も今度の戦いで」
 声も相変わらずの切実さだった。その切実さは変わらない。
 切実なものがぶつかり合い混ざることはない、聡美はそのことを感じ取りながら声に対してこんなことを言った。
「太陽も月もこの星には一つずつしかありませんね」
「私達もですね」
「それが何故かといいますと」
「二つあればぶつかり」
「そして決して一つになることはなく」
「両方共砕けてしまうからですね」
「そうだと思います」
 こう言ったのだった。
「私は今そう思います」
「そうかも知れませんね、確かに」
 声も聡美の言葉に頷いた。そして。
 聡美に対して遠くに離れる様にしてこう告げた。
「ではまた」
「去られますか」
「今お話したいことは終わりましたので」
 だからだというのだ。
「私はこれでお邪魔します」
「またお会いしましょう」
 聡美も敵意なぞ微塵もない調子で声に告げる。
「それでは」
「はい、それではまた会う時に」
 声はその気配を何処かに消した。聡美は再び矢を放つがまたしても真ん中を射抜いていた。聡美の前の的は見事に真ん中だけが射抜かれていた。
 周りのアーチェリー部の部員達、彼女と声の会話も彼女の素顔を知らない彼等は驚きを隠せない顔でその聡美に対して言った。
「いや、何時見ても凄いわね」
「銀月さん百発百中じゃない」
「的の中央だけ射抜いて」
「天才?」
「本分なので」
 聡美は周りの彼等にこう答えた。
「ですから」
「本分?」
「っていうか」
「昔からしていました」
 聡美はここでも自分の言葉には気付いていない。
「ですから」
「ああ。子供の頃からしていたのね」
「そうなのね」
 だが周りは聡美の言葉の意味には気付かずただ納得して頷くだけだった。
「それで上手なのね」
「そうなのね」
「はい、本当に昔からしていました」
 聡美は己の言葉に気付かないまま述べ続ける。
「ですからこれもです」
「ううん、銀月さんいつも最初に来て最後まで練習してるし」
「だから凄いのね」
「まさに百発百中なのね」
「ずっとしてるから」
 周りはまた納得した。そして。
 聡美に対して今度はこう言った。
「わかったわ。じゃあ私達も練習してみるわね」
「そうしたら銀月さんみたいになれるよね」

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