第五十話 政府の判断その十三
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「あと少しであの人は」
「目覚めるというのですね」
「それだけのものが集まってきました」
「彼等の。幾度も死んだ魂が」
「戦いを降りたのなら仕方ないです」
それはいいというのだ。
「最初から想定していましたから」
「そうですか」
「戦いを降りたその念もまた手に入れまして」
そしてだというのだ。
「集めてきましたから」
「お姉様はそうしていって神話の頃から彼等を戦わせてきましたが」
「それもあと少しです。ですから貴女も」
「見ていろというのですか」
「お願いです」
声にある切実さが強まった。
「最後の戦いになるかも知れないのですから」
「いえ」
だが、だった。聡美は矢を放ちながら言った。
「私はそれでも」
「私を止めるというのですね」
「はい」
あくまでという口調だった。
今度の矢も的の中央を射抜いた。声はその聡美に対して言った。
「貴女の腕は変わりませんね」
「弓矢については自信があります」
こう答える聡美だった。
「私の司るものですから」
「そうですね。弓矢は貴女のものですね」
「お兄様と同じく」
聡美は言った。
「弓矢は私の司るものです」
「そして狩猟もまた」
「その通りです」
「そして」
「貴女と同じものも」
聡美の方から言ってきた。
「今もそれは同じです」
「私と貴女は属するものは違います」
「ですがそれでもです」
「貴女が生まれた時から私達は一緒でしたね」
「だからこそ申し上げます」
聡美は新たな矢をつがえながら声に言う。その動きは弓矢というものを何から何まで知っているものだった。
その動きで構えながら言うのだった。
「お姉様、もう」
「いえ、ですが」
「それでもですか」
「私は止めます」
こう言ったのである。声に対して。
「本当にもうこれ以上は」
「貴女はどうして私をそこまで」
「お姉様だからです」
これが理由だと。聡美は声に告げた。
「それ故にです」
「私のことを想っているが故に」
「そうです」
「貴女はいつもそう言ってくれますね」
声の言葉には敵意はない。むしろ親しみ、そして愛情があった。
そしてその慈しむものと共に言うのだった。
「貴女だけは」
「私が困っている時には何時でも助けて下さいましたね」
聡美も慈しみの言葉で声に返す。
「ですから」
「私達は同じものを司ってきました」
「それ故に掛け替えのない方です」
「だからですか」
「私は貴女を止めます」
強い決意と共に声に告げる。
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