第十五章
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「好きなだけ食っていいからな」
「肉もだよな」
「二キロ買ってきたぞ」
「二キロか」
「ああ、二キロだ」
孫にその笑みを向けての言葉だ。
「ふんだんにあるからな」
「よし、それじゃあな」
「食え、後でうどんも入れるぞ」
「おお、それもか」
「わしも食うからな」
年齢を感じさせない健啖家ぶりだ、それを見せながらだった。
彼等は食べる、如月はその中で満足しながらまた言った。
「それで食ったらな」
「食ったらか」
「風呂に入っていいか?」
食べ終えたその後でだというのだ。
「そうしていいか」
「ああ、いいぞ」
祖父は孫に快諾で応えた。
「もう湧かしているからな」
「わかった、それじゃあな」
「ただ寝る前にはな」
「歯をだよな」
「ああ、磨け」
それは忘れるなというのだ。
「さもないと虫歯になるからな」
「すき焼きにも砂糖は入ってるからな」
「だから歯は磨いておけよ」
奇しくもユウキの両親と同じことを告げる。
「わかったな」
「ああ、わかってるさ」
「それじゃあな」
「食ってよく休め」
「そうする、それからな」
如月は楽しげに笑って祖父を指でビシッと指し示してみせて言った。
「ダチと遊んでくる」
「ああ、思う存分遊んでこい」
孫を送る、そうした言葉だった。
「気が済むまでな」
「じゃあそうしてくるな」
「御前の宝物だな」
「ダチは皆そうだ」
「そうして友達を何人も作っていくんだな」
「天ノ川高校でもそうだった、それで城南大学でもな」
今彼が通っているその大学でもだというのだ。
「俺は同じだからな」
「皆と友達になるか」
「大学を卒業してもな」
その時もだというのだ。
「俺はずっとダチを、宝物を作っていくな」
「そうしろ、そして宇宙を包み込む様な大きい男になれ」
「いや、俺はダチが欲しいだけだ」
自分がそうした人間になる望みはないというのだ、これは如月独特の考えだ。
「それだけだからな」
「そう言える奴こそが大きいんだ」
「そういうものか」
「ああ、大きくなれ今よりもな」
これが祖父の孫への言葉だった、如月は祖父の言葉と心を受けたうえで。
すき焼きを腹一杯食べそして風呂に入り歯を磨いたうえで飽きるまで寝た、それからだった。
次の日起きた時はもう夕方だった、身支度を整えて丁度仕事が終わったところの祖父に微笑んで声をかけた。
「じゃあ今からな」
「遊びに行くんだな」
「ああ、ダチとパーティーだ」
それに出るというのだ。
「楽しんでくるな」
「思いきり楽しんでこい」
「そうしてくるな」
こう話してだった、如月は己のバイクに乗り城南大学に向かった、大学までは一人だった。
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