第一幕その二
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第一幕その二
「御苦労だった」
「それでは」
「王が来られる」
グルネマンツはその女クンドリーに告げた。
「悪いがそちらに向かう」
「はい、それでは」
「休むがいい」
やはり彼女には優しい言葉をかけるのだった。
「よいな」
「わかりました」
クンドリーはその場に前のめりになって倒れ込んだ。そのうえで眠りに入る。泥の如く眠りその間にだ。グルネマンツは顔を王の一行に向けるのだった。
「おいたわしや」
「何ということか」
「アムフォルタス王よ」
彼だけでなく騎士達や小姓達も悲しい顔で言うのだった。見れば彼等と同じ白銀の鎧兜や白いマントの騎士達と白い服の小姓達が持つその寝輿に乗って黒い髪と茶色の髭の厳しい男がやって来た。その顔は重厚であり威厳と気品も兼ね備えている。そして寝ていても長身であることがわかる。彼がアムフォルタス王だった。
「誇り高い武勲優れた方が」
「あの様に寝込まれて」
「惨い話だ」
「よし」
ここで王は輿から身体を起こして述べてきた。
「ここで少し休もう」
「ここで、ですか」
「休まれるのですね」
「そうだ。少し休もう」
周りの騎士や小姓達の問いに答えての言葉であった。
「そしてだ」
「はい、そして」
「今は」
「激しい痛みの夜を明かした後は森の朝景色も一際素晴しく見える」
その森の空気を感じながらの言葉だ。それは確かに爽やかで美しいものであった。
「あの神聖な湖の水を浴びれば」
「はい、御身体も」
「きっと」
「この身体を元気付けてくれよう。痛みが和らげば苦しい夜の暗さも明るくなる」
「王よ」
ここでグルネマンツが彼の前に出て来た。そのうえで先程のクンドリーのバルザムを差し出してきたのである。
「どうかこれよ」
「それは」
「王の為にアラビアから届けられたものでございます」
「アラビアからか」
「その通りです」
王の前に片膝をついたうえで差し出していた。
「これをです」
「そういえばだ」
王はここで言うのだった。
「ガーヴァンもまた薬草を取りに行っていたな」
「はい、今は」
「行っております」
「クリングゾルの罠にかからなければいいが」
王は周りの者達の言葉に憂いのある顔で返した。
「それが心配だ」
「そういえばです」
「王よ」
騎士達が彼にまた言ってきた。
「あのことは」
「どうなのでしょうか」
「共に悩みて悟りゆく」
王は彼等の言葉を受けて静かに呟きはじめたのだった。
「純粋無垢の愚か者か」
「はい、その者です」
「その者は」
「今の私には正体がわかる気がする」
ここでこんなことを言う王だった。
「その者はだ」
「はい、その者は」
「何なのでしょうか」
「その男を死と呼ぶの
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