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王道を走れば:幻想にて
第五章、その2の1:圧倒
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俺をこんなざまにした報いだ。そのままやられちまえ」
「・・・兎に角、手を放してください。僕は中に入ります!そして、ケイタクさんを引き止めなくてはならないんです!」
「なぜだ?優勢を誇っているじゃないか。あのままなら、チェスターはいずれ倒されるぞ?」
「・・・なんだか、いやな予感がするんです。ここで、彼が理性を留めている間に動かないと、全てが終わってしまうような気がするんです・・・。彼が願っていた理想の未来も、僕らが彼に期待していた未来も。全部が台無しになってしまうんですっ」

 言葉を選びつつも繰り出される言葉には、一種鬼気迫るものを感じられる。アダンはリコの表情を見て、その覚悟に変わりがないかを尋ねんとした。正しい返答さえ聞ければ彼は諦めてリコを通す心算であった。
 しかし彼らの間に広がったのは、ドワーフの声では無く、若者の声でもなかった。

「人間とドワーフか。このような所で何をやっているのかな?」
『っ!?』

 冷たく響いたのは老人のしわがれた声であった。見ると、幾人もの男を従えた老人がこつこつと歩んできているのが見えた。アダンは彼に纏う圧倒的な魔力に目を見張る。広間で戦っている二人よりも、彼単独の魔力の方が大きかったからだ。

「突然で恐縮だが、君達には静かにしてもらうぞ。答えは聞いていないがな」
「だ、誰です!僕を北方調停団と知ってのーーー」

 直後、矢のように光が走った。それに当てられたリコはまるで催眠に掛かったように力を無くし、膝から地面に崩れ落ちる。老人は大扉の傍に座るアダンに指を向けた。

「ドワーフよ。恐らく君が起きた先は牢獄だ。眠る前に遺言を作る覚悟をしておくがいい。老人からの忠言だ」
「・・・そうか。あんた、魔術学院のやつだな?その陰湿な眼つきで思い出したぜ。昔、あんたの弟子から宝石を盗んだ事がある・・・その時弟子が何とか言ってたっけなぁ・・・。そうだ、あんたの名は、マティウスだったな?」
「よくぞ覚えていた。処刑されるまで私の名前を覚えている事だ。私の輝かしき名を胸の内で反芻させていれば、君の卑しい過去も少しは(あがな)われるだろう」

 マティウスの指が光り、それによってアダンも地面に倒れこんだ。広間内に吹き荒れる膨大な魔力を感じ取り、マティウスはにたりと微笑んだ。

「ここから先は私だけが行く。ドワーフは学院にある私の研究所へ。人間は近くの村に運べ」
「村とは、王国側にあるあの村でしょうか?」
「帝国に運んでどうする?さぁ、早く運べ」

 傀儡らはてきぱきと動く。二人がリコを抱え、後の三人はアダンを抱えると、それぞれ地面に魔法陣を展開して『転移』の魔術を行使し、忽然とその場から消え失せる。
 マティウスは大扉に手を掛けると魔力を掌に通わせ、寸勁をするように力を抜い
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