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王道を走れば:幻想にて
第五章、その2の1:圧倒
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の余波であろう砕けた氷がリコの顔があった所に突き刺さる。 
 思わぬ幸運に恵まれた彼であったが、而して憤慨したように壁に凭れかかる人物を見遣った。全身に痛々しい火傷を負いつつも持ち前の気力で意識を保っているドワーフ、アダンであった。

「何をするんです!?」
「行くな・・・殺されるだけだぞ・・・」
「だからといって、見て見ぬフリをする訳にはいきません!ケイタクさんを助けないといけないんです、僕は!」
「それは蛮勇だ。お前のような非力な小僧では、奴の心を引き戻す事など出来ん・・・けほっ、げほっ!」

 喉もやられているのか、咳がひどく辛そうであった。にも関わらず彼は平常心のままに、どこか悟ったような視線を扉の隙間に注いだ。そこからは暴風よりも尚凶暴な魔力が衝突する光景が繰り広げられており、アダンは嵐の真っ只中にいる二人の人間を見ていた。

「あれは魔物だ。形を保っていようと中身はもはや人間ではない。身体も、心も、ぜんぶ魔力に支配されている・・・」
「なんでそんな、そんな馬鹿な事が言えるんです!?あなたドワーフでしょう!?ただ自分の力だけが取り柄の!」
「馬鹿め。俺だって、魔力は備わっている。ただ、使い方が分からなかっただけだ・・・こんなざまになるまで、ずっとな・・・。分かるんだよ、魔力の流れが。
 ・・・見た所、お前にも魔力がある。だが・・・ははっ、ありんこみたいに小さなモンしかねぇや。お前、魔法で飯を食うには才能が全く無いらしい」

 アダンはまた咳を零す。文句を言わんとしたリコであったが、扉付近に炸裂した火球の轟音に驚き、びくりと肩を震わせてしまう。そしておずおずと広間の様子をまた窺うのであった。
 先程と攻防の様子は変化していないようであったが、その中身は変化しつつあった。心なしかチェスターの足が引き気味となっており、打ちだされる慧卓の氷の柱を障壁で受けるも、たかが二発程度で食い破られてしまっている。

「っ、こ、これは、どうした事か・・・私が押されるいるのか?」

 屈辱と、右肩より走る激痛に苛まれながらチェスターは自問する。対して慧卓は人形のような顔を崩さず、機械じみたように魔術を打ち出していた。側頭部に雷撃を食らったせいで一部の頭蓋が飛ばされ、また床に叩き付けられたせいで足が変な方向に曲がっているのに関わらず、彼は感情を露わとしていない。よく見れば怪我を負った場所には蛆のように泡が集っており、何らかの回復魔法で肉体の修復を行っているようであった。『自分よりも重傷なのに』とチェスターは苛立ち、彼に向かって雷撃と火球を放っていく。
 アダンはかつての仲間の様を見て、嘲けるように息を漏らす。彼から見ればチェスターの優位など存在してない。持っている秘宝の数だけ慧卓は有利なのである。

「ざまぁねぇな、あいつも。
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