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王道を走れば:幻想にて
第五章、その2の1:圧倒
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。ただのドールと同じである。しかし現実には彼の魔術には『狙いに向かって飛ぶ』という性質が感じられる。つまり、チェスターが認識できていない部分では、彼の中に一種の理性であったり、或は魔力をコントロールする何らかの媒介のようなものが存在しているのだ。二つの秘宝を制御ほどの道具があるとは俄かに思えなかったが、この世には何事も例外というのがある。目前の彼がそうであるのなら、チェスターはそれを受け入れ、その上で彼を撃破するまでであった。
 慧卓の戦いを改めて見るに、彼は復活当初から一歩たりともその場を動いていない。それもまた彼の安定性の一助となっているのだろうとチェスターは仮定し、地面に雷撃を走らせて瓦礫を浮かせると、火球を伴わせて一気に飛ばす。単純な質量による猛攻であり、それまで微動だにしていなかった慧卓の障壁に俄に罅が入っていき、噴煙が視界を覆っていく。前面からの集中砲火に対抗するため、慧卓の魔力が障壁前方に集中していき、障壁は厚みを増していく。幾秒かの注意をそこに割いていると、突如として横合いより、痛烈な雷撃が走っていき、慧卓の側頭部に直撃した。

「当たったっ!」

 チェスターはそのまま第二の雷撃を撃ち、それをたたらを踏んだ慧卓の足に絡ませて捉える。そしてあたかもカウボーイが縄で獲物を弄ぶかのように、雷撃を大きく振り回し、慧卓を宙に浮かせて地面に叩き付ける。何度かそれを繰り返すと、チェスターは思い切り雷撃を杖から切り離して慧卓を投げ飛ばした。投げられた勢いで片足を無くした慧卓は、そのまま壁に衝突して罅を入れさせながら、力無く地面に倒れこんだ。
 チェスターは己の企みがうまくいった事に喜ぶ。慧卓の単純な意識をうまく利用した揉め手であった。前面に意識を集中させながら、視界を潰して横合いから殴る。もしかしたら彼に理性があっても成功していたのかもしれない。そう粋がっていた矢先、倒れこんでいた慧卓は魔のような速さで錫杖を掲げて魔術を放つ。チェスターは瞬きの直後、己の右肩に大きな衝撃を受けたのを理解した。見ると、拳大はあるであろう大きな氷の柱が突き刺さっていて、だくだくと流血を強いらせていた。

「ぅぐっ・・・目は付いているのかねっ!?」

 強がりながらチェスターは氷の柱を握ると、掌に魔力を通わせて柱を粉砕する。体外に出た部分だけを砕いたのは流血を抑えるためであった。彼は魔道杖を構え直すと、地面から起き上がりつつある慧卓に向かって火球を連射していった。
 その時、ぎぎぎと、広間の大門が開いていく。そこから顔を覗かせたのはリコであった。彼は広間内の常識外の攻撃に目を見張り、魔力のぶつかり合いに震えた。

「何だこれは・・・一体・・・」

 『何が起きている』と言わんとしたリコであったが、いきなり腕を引っ張られて尻餅をついてしまう。直後、魔術
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