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王道を走れば:幻想にて
第五章、その2の1:圧倒
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ったりとした歩みで宮殿へと向かっていく。老いたとはいえ衰えてはいない彼の鋭敏な感覚が、宮殿内に滅茶苦茶と吹き荒れる魔力を感じ取っていた。龍が持っていたものよりも大きなものが、二つ、互いを食い合うように交錯している。それは宮殿の中心部から発生しているように感じられた。
 龍を甚振るよりも愉しい事が待っていそうだ。マティウスは知らない内に、枯れ細った自分の胸がわくわくと弾んでいるのに気付く。まるで三時のおやつに出るケーキを愉しみにしている時と、同じ胸の弾み方であった。かさついた手をすりすりと擦り合わせて、彼は宮殿の正門を潜り抜ける。
 厚底の雲に覆われた空からは、はらひらと雪が降りつつあり、嵐の兆しである強い風がそれを遺跡へと運んでいた。



ーーー宮殿内にてーーー



 一直線に飛ばされる氷塊が玉座に当たり、それをものの見事に粉砕した。氷塊が過ぎ去った地面には、雷によって黒く焦げた痕であったり、何かの爆発の爪痕であったり、或は風雪が通り抜けた痕であったりと・・・。およそ自然的な調和のとれていない、混沌とした破壊の光景があちこちに見られていた。まるで伏魔殿を一気にひっくり返して中身を暴いたような、普通の人間の神経ならば理解が及ばぬであろ光景であった。
 壇上の高みから魔道杖を構えたチェスターは、恐ろしい密度で飛来してくる小さな氷の塊に向かって、炎に覆われた『障壁』を展開する。氷は炎に接した瞬間に蒸発していくが、溶けきらなかったものは障壁に衝突して食い込んでしまう。まともに人体に当たれば貫通は避けられないだろう。チェスターは外側に向かって障壁を爆破させて煙幕を張ると、その内側から『雷撃』の魔術を繰り出した。しかし、義眼によって威力が向上されたものであるのに、『雷撃』は相手方が張った氷の障壁によって相殺されてしまった。

「これは・・・思わぬ展開だな!」

 煙幕の晴れた先に立っている敵に向かってチェスターは吼えたてた。慧卓は、魔力の循環によって白目と黒目の区別がつかなくなりつつある、紫色の瞳を向けてくる。チェスターの第二の雷撃が打ち出されるが、威力不足のために簡単に障壁に阻まれしまう。対して慧卓はその場から微動だにせず、障壁を展開したまま空いた手に魔力を宿し、それを振り抜いて特大の氷の柱を打ちだした。あれは障壁を貫通するほどに強力な物だと知っているため、チェスターはすぐに身を転じて場所を移動していく。
 こんな流れがかれこれ十分近く続いていた。氷の柱から端を発した、終わりの見えない攻防戦である。互いに狂王の秘宝を手にしているために魔力はほとんど無尽蔵。練度と才能が勝るチェスターに対して、慧卓は二つの秘宝による圧倒的な魔術を展開し、相手の攻撃を完全なまでに無効化している。かといって攻撃手段については単調で直線的であり、チェスターは
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