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王道を走れば:幻想にて
第五章、その2の1:圧倒
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て一気に扉を押す。その瞬間に扉は爆発したように吹っ飛び、チェスターと慧卓の間を飛んでいた氷の柱を巻き込み、玉座の残滓を粉砕してしまった。いきなりの乱入にたじろいだのか、魔術による交流が途切れた。
 マティウスは割って入るように歩んでいく。

「これはこれはお二方。派手にやっておるようで」
「む!?君は誰かね!?戦いに横槍を入れるとはなんと卑劣な!!私を狂王の忠実な家臣と知っての狼藉か!!」
「そう急くな、若造。・・・時に、君の魔術は随分と初歩的だな?魔術の二重構造というものをよく理解していないようだ。いかに濃密な魔力を込めようとも外縁部を強化せんとすぐに潰されるぞ。それに雷撃を使うのなら魔術ごとの許容電流を理解しておく事だ。君のそれは過電流を起こし、少なくとも4割はーーー」
「知った口を!二人まとめてやってやる!!」

 吼えたてるようにしながら、チェスターは手元でくるりと魔道杖を振り回して幾つかの火球を展開する。マティウスの実力の一端を見てか、それらは慧卓を相手とするよりも強力な魔力が込められていた。いざそれを放たんとした時、突如、旋風のように吹きぬいた暴風によって火球が弾け飛び、チェスターは顔を庇いながら身を反らした。
 旋風の発生源は慧卓であった。錫杖を鋭く振り抜いて、周囲一帯に猛烈な突風を浴びせたのだ。地面のタイルが抉れる程の強力な風であり、広間全体に至るまで破壊の爪痕を残す。しかして慧卓の予想とは裏腹に、彼が狙った獲物はなおも壮健な姿を保っていた。彼が張った障壁は、慧卓の魔術を完全に防いだのであった。

「狂王め。部外者は口を出すなと言いたいのか?死者の癖に生意気ではないか。若人二人で私をどうにかできるとでも?」

 にたにたとしながらマティウスは手元に魔力を通わせる。チェスターは驚きのあまり口をあんぐりと開けてしまった。秘宝を持った自分達に匹敵するほどの膨大な量の魔力が流れており、しかもそれは安定性に恵まれたものであったのだ。老人は高位の魔術師であると、チェスターは認識を改めて警戒を露わとする。

「なんだ、あの老人は・・・!?貴様っ、一体何者だ!!」
「ただのしがない探求者だ。義眼を奪った後に名乗るとしようか」
「ほざけ、老骨め・・・うっ!?」

 啖呵を切ったチェスターであったが、急に苦しげな表情をすると胸元を抑えて、がくりを膝をついてしまった。彼の手先はがくがくと震えてしまい碌に魔道杖を握る事もできなくなっていた。何が起こったのかと自問自答するような顔つきとなった彼に、マティウスは冷静に答えを告げた。

「魔力を使いすぎたようだな。身体中の血管がボロボロになっているだろう。たとえ秘宝を手にしたとしてもその資本となるのは人間の肉体だ。若造、君の身体はこれ以上の魔術の使用を拒んでおる。もっと使えるように
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