第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十三 〜棄民〜
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は、はい。鈴々ちゃんを相手にするには、実力不足かと。程なく、勝負がつくでしょう」
確かに、まともに討ち合うなら、そうであろう。
……だが、あの女子……何かを窺っているようだ。
鈴々に押されるように、じりじりと下がっていく。
「逃げてばかりじゃ、勝てないのだ」
「う、うるさいっ!」
「なら、止めなのだ!」
鈴々は蛇矛を構え直すと、女子に向けて踏み込んだ。
その時。
「にゃあっ?」
足元がいきなり崩れ、鈴々の姿が消える。
……落とし穴を仕込んでいたか。
「鈴々ちゃん!」
「おおー!」
愛里と風が、同時に叫んだ。
「油断大敵だぞ、おチビちゃん」
女子は、蛇矛を踏みつけて抑えながら、剣を鈴々に突き付けた。
「は、放せなのだ!」
「嫌だね。さ、このおチビちゃんを助けたければ、言う事を聞きな」
女子は、私に向けて言い放つ。
「……いいだろう。暫し待て」
私はそう答え、腰から皮袋を外した。
さりげなく、愛里に視線を送りながら。
「金は、全てここにある」
「よし。こっちに投げて寄越せ」
「良かろう。……受け取れ」
女子の足許に、袋を投げた。
ドサリ、と音がして……女子の、遥か手前に落ちた。
「届かないじゃないか。おい、そっちのおチビちゃんに持って来させるんだ」
「愛里」
「は、はい!」
愛里は、皮袋のところまで駆けていく。
「お、おわわわわわっ!」
そして、盛大に転んでしまう。
「おいおい、大丈夫か?」
「あいたたた……」
一瞬、女子の視線が逸れた。
その隙に、私は足下の石塊を拾い、女子に向かって投げつけた。
「!」
咄嗟に、女子は剣でそれを払う。
「何しやがる!……あ」
剣が、半ばからポキリと折れた。
「愛里!」
「はいっ!」
転んでいた愛里、素早く起き上がると、懐から小刀を取りだし、女子に投げつけた。
「うおっ!」
見事に躱したが、当然、身体は動いてしまう。
「へへーん。形勢逆転なのだ」
鈴々がその隙に、穴から這い出て、蛇矛を手にした。
「さて、まだ戦うか?」
「ひ、卑怯だぞ!」
「落とし穴を使うお前に言われたくないのだ」
「ぐ……」
折れた剣では、もはや、鈴々の攻撃は防げまい。
「それに、戦えるのはお前一人であろう? 無駄な抵抗は止せ。大人しくすれば、危害は加えぬ」
「……わかったよ。あたしの負けだ」
女子は、剣から手を離した。
兵が縛り上げようとしたが、私はそれを止めさせた。
「何故、このような真似をした?」
「……仕方なかったんだ。見ての通り、畑は荒れ放題、それなのに官吏共は何もしてくれない。じゃあ、どうやって
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