第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十三 〜棄民〜
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
」
「にゃはは、でも白蓮お姉ちゃんの軍は、確かに弱いのだ。騎馬隊だけは強かったけど、その他は大した事ないのだ」
「全てを一人でこなさなければならないのでしょうから、調練が行き届かないのでしょう。袁紹殿の場合は、単なる怠慢、と言われても仕方ありませんが」
話が逸れてきたな。
「渤海の現状はわかった。それと、袁紹の影にいる人物は如何であった?」
「それなんだけど……」
と、嵐は言い淀む。
「まさか、袁紹本人が全て画策していた、と申すのではあるまいな?」
「んな訳ないじゃん。いるにはいるらしいんだけど、正体が掴めなかったんだ」
「面目次第もござらん。鎌をかけてみたのですが、顔良に遮られましてな」
無念そうな二人。
「なかなか、尻尾を掴ませぬか。疾風(徐晃)が探り出せぬ程だ、余程の者と見て良いな」
「ますます、気になりますね。袁紹さんとの関わりが切れない以上、何としても確かめておいた方がいいですね」
「愛里(徐庶)様の言う通りですが……」
では、どうすれば良いか、となると。
搦め手を攻めても無益、とならば、正面攻撃しかあるまいな。
「嵐、星。袁紹は、私を拒絶する様子はない、それで間違いないな?」
「ああ。旦那の事嫌ってるなら、そもそもおいら達に会おうとはしないだろうしさ」
「ですな。少なくとも、袁紹殿にはそのような芝居は不可能でござろう。兵士にも、我らを警戒する様子はまるでありませぬ」
ならば、次の一手を打つとするか。
「……風、愛里、鈴々。渤海に出向く、共に参れ」
「歳三さん? わたしも……ですか?」
愛里は戸惑ったように言う。
「そうだ。何か不都合があるか?」
「い、いえ……。ただ、わたしは文官、お役に立てますでしょうか?」
「お前の才は、皆が認めるところだ。それに、お前は袁紹に顔を知られておらぬからな」
「風は、お兄さんが炙り出した人物の目利きをすればいいのでしょうか?」
「流石だな。お前と愛里、二人がかりならば万全であろう、頼むぞ」
「は、はい」
「御意ですー」
「お兄ちゃん。鈴々は何をすればいいのだ?」
「無論、我らの警護を頼む。お前なら問題あるまい」
「了解なのだ!」
「他の者は、留守を頼むぞ」
皆、大きく頷いた。
「此処が渤海郡……ですよね?」
愛里が、呆然と立ち尽くす。
無理もあるまい、私が最初に魏郡で目にした以上の光景が、そこにあるのだ。
「これでは、徴税もままならないでしょうねー」
「酷すぎるのだ……」
冀州よりも食糧事情の悪い幽州ですら、ここまで凄惨ではなかった。
村と思しき場所で、人の姿が全く見当たらぬのだ。
畑は枯れ、手入れされた気配すらない。
ガアガアと、鴉の鳴き声ばかりが木霊する。
「……参るぞ。我らに出来る事は、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ