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至誠一貫
第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十三 〜棄民〜
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「にゃはは、でも白蓮お姉ちゃんの軍は、確かに弱いのだ。騎馬隊だけは強かったけど、その他は大した事ないのだ」
「全てを一人でこなさなければならないのでしょうから、調練が行き届かないのでしょう。袁紹殿の場合は、単なる怠慢、と言われても仕方ありませんが」
 話が逸れてきたな。
「渤海の現状はわかった。それと、袁紹の影にいる人物は如何であった?」
「それなんだけど……」
 と、嵐は言い淀む。
「まさか、袁紹本人が全て画策していた、と申すのではあるまいな?」
「んな訳ないじゃん。いるにはいるらしいんだけど、正体が掴めなかったんだ」
「面目次第もござらん。鎌をかけてみたのですが、顔良に遮られましてな」
 無念そうな二人。
「なかなか、尻尾を掴ませぬか。疾風(徐晃)が探り出せぬ程だ、余程の者と見て良いな」
「ますます、気になりますね。袁紹さんとの関わりが切れない以上、何としても確かめておいた方がいいですね」
「愛里(徐庶)様の言う通りですが……」
 では、どうすれば良いか、となると。
 搦め手を攻めても無益、とならば、正面攻撃しかあるまいな。
「嵐、星。袁紹は、私を拒絶する様子はない、それで間違いないな?」
「ああ。旦那の事嫌ってるなら、そもそもおいら達に会おうとはしないだろうしさ」
「ですな。少なくとも、袁紹殿にはそのような芝居は不可能でござろう。兵士にも、我らを警戒する様子はまるでありませぬ」
 ならば、次の一手を打つとするか。
「……風、愛里、鈴々。渤海に出向く、共に参れ」
「歳三さん? わたしも……ですか?」
 愛里は戸惑ったように言う。
「そうだ。何か不都合があるか?」
「い、いえ……。ただ、わたしは文官、お役に立てますでしょうか?」
「お前の才は、皆が認めるところだ。それに、お前は袁紹に顔を知られておらぬからな」
「風は、お兄さんが炙り出した人物の目利きをすればいいのでしょうか?」
「流石だな。お前と愛里、二人がかりならば万全であろう、頼むぞ」
「は、はい」
「御意ですー」
「お兄ちゃん。鈴々は何をすればいいのだ?」
「無論、我らの警護を頼む。お前なら問題あるまい」
「了解なのだ!」
「他の者は、留守を頼むぞ」
 皆、大きく頷いた。


「此処が渤海郡……ですよね?」
 愛里が、呆然と立ち尽くす。
 無理もあるまい、私が最初に魏郡で目にした以上の光景が、そこにあるのだ。
「これでは、徴税もままならないでしょうねー」
「酷すぎるのだ……」
 冀州よりも食糧事情の悪い幽州ですら、ここまで凄惨ではなかった。
 村と思しき場所で、人の姿が全く見当たらぬのだ。
 畑は枯れ、手入れされた気配すらない。
 ガアガアと、鴉の鳴き声ばかりが木霊する。
「……参るぞ。我らに出来る事は、
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