例えばこんな初恋の行方は認めたくなかったのに
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て―――
一夏は私の思いなど知らないし、私がどんなに伝えようとしてもその勇気を微塵に散らしてしまう。
私がどんなに頑張っても、あいつは私の本当に見てほしい所に興味など無いのだろうか。
あいつは私を幼馴染だとは思っているが、それ以上にはならない。
そうしているうちに、私はいつの間にか同室の一夏よりゴエモンとの会話の方が楽しく感じてくる始末だ。
ゴエモンは私の思いを面白いくらいに汲み取ってくれるのに。真剣に、真面目に、正面から。
話を聞いてくれるというただそれだけのことが、そんなにも嬉しく感じたのは初めてだったかもしれない。
そうして過ごしているうちに、私は思ってしまったのだ。
昔は一夏が好きだった。それは言い換えれば、昔『の』一夏『が』好きだったということ。
――では今は?私は今の無神経で朴念仁で時々しか人の気を知ってくれない『今』の一夏が好きなのか?
――本当に?本当に好きか?理想と現実の差に落胆していないか?昔の恋を今の恋と錯覚していないか?
私には、分からなかった。
紅椿を得れば一夏に私の存在をアピールできる。私の実力が他の連中に劣っていないと見せつけられるだろう。
だが、アピールしてどうなる?あの一夏相手では、今までと変わらないんじゃあないのか。
「凄いな、流石は箒だ」、と。その一言で全てが片づけられるような男ではないか、一夏は。
私の努力は誰が為のものだ。私の想いは誰に向けている。私は何のために、誰のために。
私は――一夏が好きなのか?
「分からないんだ・・・もう私には、分からないんだ・・・何のために戦っていたのか、分からなくなってしまった。意志の宿らぬ剣など、鈍の鉄屑だ・・・」
「箒、アンタ・・・・・・」
鈴音は私を抱きしめようとして、身長が足りなくて仕方なく私の涙をハンカチでぬぐった。その姿がちょっと微笑ましくて、心を満たした悲しみが少しだけ消えた。鈴音は何も言わなかった。ただ静かに涙をぬぐい続けた。一人の女性として、箒にかけられる言葉が思い浮かばなかった。
やがて、ハンカチが涙でずぶぬれになった頃に鈴音が声を上げた。
「このハンカチ、ゴエモンからあんたへの誕生日プレゼントらしいわよ。「本当は直接渡したかったけど忙しいから」って頼まれちゃったのよね・・・あいつも女心ってものが分かってないわね〜?たとえ遅れても直接渡すことに意義があるんでしょーに!」
はっと時計を見ると、時刻は既に深夜零時を過ぎ・・・自分の誕生日へと日付が変わっていた。人生で最低の日は、めそめそと泣いているうちに終わってしまったようだ。
ハンカチに沁み込んだ涙を軽く絞ったす鈴音は私にハンカチを押し付けた。・・・黄色
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