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【IS】例えばこんな生活は。
例えばこんな初恋の行方は認めたくなかったのに
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参加しない。否、出来ない。

「私は、戦えない」

最近ずっと同じことばかりを考えていた。その迷いを解決できないまま今日という日を迎え、一夏が倒れたことで本格的に分からなくなってしまった。それは間違いなく私を構成する重要なもので、でもそれが今はないのだ。

「・・・ッ!アンタ、専用機の事あんまり気に入ってないみたいじゃない。博士とも仲が良くないって聞いたわ」
「ああ。でも、それは関係ない」
「・・・じゃあ何よッ!!」

淡々と淀みなく口から紡ぎだされる無気力な声に、鈴音の忍耐も限界を迎える。後ろから肩を掴まれ無理やり顔を正面に向けられた。その先にいるのはいつもの鈴音ではない、本気で怒っている鈴音。一夏が馬鹿を言って怒らせたのとはわけが違う本物の怒りだ。

「専用機持ちが戦うべき時に戦わないってのがどんだけ無責任な事か分かってんの!?一夏がやられたのは自分のせいだからもう戦えません、なんて通るとでも!?」
「通らんだろうな」
「ならッ!!いつまでそこでいじいじ黄昏てんのよ!!アンタもアイツが好きなんでしょうが!!なら――」



「分からない、分からないんだ」



―――わたしには・・・一夏が本当に好きなのか、分からなくなってしまった。



はっと鈴音は痛いほどに握りしめていた肩を離す。月夜の光に照らされた一筋の滴が砂浜に落ち滲んで消えた。





好きだったんだ。確かに。

学校で私のためにいじめっ子を追い払ってくれた一夏の笑顔が好きだったんだ。

剣道に打ち込み、私を超えるほどの成長を見せて自慢するように笑う一夏の前向きな心が好きだったんだ。

隣で笑っているお前が、姉の自慢をする一夏が、そのひたむきな明るさが、確かに好きだったんだ。

転校してからも好きだった。中学に上がってからも好きだった。IS学園の入る時も、私は一夏が好きだった。

ISだって本当は嫌いだったのに、お前が操縦者になったって聞いたから必死に練習して。

再会したときだってこの上なく心が満たされるのを感じたんだ。幸せを感じたんだ。


なのに、なのに―――


お前という奴は何所まで言ってもデリカシーが無くて、女心が分かってなくて。

ちょっと目を離せばほかの女とばかり話して、ちっとも私の方を向いてくれない。

おまけにお前に好意を寄せる女が次から次へと寄ってきて、私の気持ちなどお構いなしだ。

私は幼馴染で、皆よりずっとずっと昔からお前の事を好きだったんだぞ。

お前の事ばかり考えて何年も生きてきたんだ。お前がいたから今の私がいるんだ。

なのにどんなに思っても、勇気を出して行動に移しても、お前はちっとも私の想いに気付いてくれなくて。


どうして、どうし
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