戦いの前に
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大会には何の意味もないと思っていた。しかし、何だ……随分とこの一カ月は楽しい大会だ。これを企画した人間に感謝してもいい。明日も決勝大会も、非常に厳しい物かもしれないな」
言葉は、本音のようであり、誰もが納得したように頷いていた。
わずか一カ月で多くのことがあった。
先ほど寂しさを感じたのは、きっとコーネリアだけではないのだろう。
テイスティアも何度も頷いている。
普通の士官学校では上級生と交流することはあまりない。
それが上級生の話を聞け、学び、そして共に闘う。
ワイドボーンの言葉通り、これを企画した人には感謝してもし足りない思いがある。
アレス・マクワイルドだけが小さく苦笑していたが。
「私は今まで天才だと言われてきた。そうだろう、私は天才なのだから」
自信を持った断定で、ワイドボーンは小さく笑う。
「その天才が断言する。君たちが負けることはない――負けるところなど考えられないと。異論はあるか?」
「ありませんよ、先輩」
アレスの言葉を筆頭に、誰もが異論がないと告げる。
ワイドボーンは目の前でにっと笑みを浮かべた。
「そうか。では、諸君――明日は大会の本番だ。何、気にする事はない。私達はただ、勝つだけだ」
「はっ」
呟いた言葉に、周囲が一斉に敬礼を行った。
ワイドボーンが答礼で返し、ゆっくりと腕を下げ、小さく呟いた。
「ありがとう……」
その言葉は、誰も聞こえなかったであろう。
しかし、誰もがゆっくりと頷いて、同じ言葉を呟いたのだった。
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