第十九話 トリップするのは止めてくれ
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危惧されている。そしてその危惧は宇宙艦隊司令部だけのものではない……。
「帝国では軍法会議が有ったそうだ。命令違反をした司令官二名は死刑になったらしい、それに関与した貴族も何名かが処罰を受けている」
「帝国では違反者が生きていました。だから処罰を下す事で権威を保てます。しかし同盟は……」
私が口籠ると本部長が後を続けた。
「ホーランド中将は戦死したからな、同盟軍はそれが出来んというわけだ」
「はい」
シトレ本部長の表情が益々苦いものになった。
「だからイゼルローン要塞を攻略する事でビュコック司令長官の権威を上げるか……」
「そうです、すでに準備は殆ど終わっています」
後は本部長の決断次第だ、それを言外に滲ませた。本部長が私を見て溜息を吐いた。
「ビュコック司令長官からは君の作戦案で攻略させて欲しいと要望が出ている。失敗すれば辞任する覚悟のようだ。司令長官である事の意味が無いと言っている」
「……」
「……失敗は許されん、良いね?」
「はい」
帝国暦 487年 5月 13日 オーディン グリンメルスハウゼン元帥府 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
「妙な事になりましたな」
「そうですね」
「随分と急な事ですが」
「全くです。余程に怒ったらしい」
元帥府の事務局長室でリューネブルクと二人、顔を見合わせた。
ベーネミュンデ侯爵夫人がオーディンから追い出される事になった。当初俺が帝国軍三長官に報告した時にはそんな事になる気配はまるで無かった。三人とも気でも狂ったかと言いたそうな顔だったからな。事実統帥本部総長シュタインホフ元帥はそれを口に出した、“馬鹿に付ける薬は無いな、放っておけ”。俺も全くの同感だ。
実際あの女が辺境に居るラインハルトを殺せる可能性は無かった。三長官が放置したのも間違いとは言えない。それにラインハルトを辺境に置いておく理由にもなる。馬鹿女が夢を見てトリップしているだけなら何の問題も無かった。鬱陶しくは有るが害は無いと判断したのだ。
ところが帝国軍三長官が国務尚書リヒテンラーデ侯に報告した辺りから雲行きが怪しくなったらしい。リヒテンラーデ侯は俺や帝国軍三長官と違いこの一件をかなり重視したのだ。その理由は例の馬鹿八人衆だ。あいつらの所為で軍は七十万人以上の死者を出した。そのほとんどが平民達だ。
クライスト、ヴァルテンベルクが死刑になったとは言え元はと言えば貴族達の余計な口出しが原因だ。平民達の間に貴族に対する不満が高まったと国務尚書が判断してもおかしくは無い。そんな彼にとってはこれ以上の貴族の不祥事は有ってはならない事だった。
ましてそれが皇帝の寵姫の争いとなればどうだろう、非難は直接皇帝に向けられかねない。国務尚書が最も恐れる事態の発生だ。国
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