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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第11話 「戦いは数だよ。兄貴。by家業再建中のルードヴィヒさん(自営業 二十歳)」
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事に」

 抑揚の少ない声だ。歌でも歌って練習するべきだ。

「叛徒どもが来れば、破壊されるがな」
「それがどうしたというのだ?」

 ジルヴァーベルヒが皮肉げに言うのを、ばっさりと切り捨てたな。こちらの方がよく似合う。

「いかに叛徒どもが破壊しようとも、帝国は辺境を見捨てぬ。宰相閣下のお言葉だ」
「それを卿は信じているのか?」
「卿こそ、信じていないのか?」

 いかん。どうもこの二人は、ぶつかりすぎる。頭が良すぎるのだな。だから考えすぎて、ぶつかる事が多くなる。

「食い物を与えてやるから、黙っていろというのか」
「飢えた者を前にして、権利を与えてやる。だから勝手にしろとでも、言いたいのか?」

 だから卿らがぶつかって、どうするというのだ。
 分かった。この二人似ているのだ。だから反発しあうのだな。
 周囲を見れば、我関せずとばかりに、自分の仕事に勤しんでいた。卿らも少しは、この二人を抑えようとは思わんのか?
 せっかくケスラーが、皇太子殿下の意思を伝えるために、辺境に赴いているというのに。

 ■宇宙艦隊総旗艦ヴィルヘルミナ アルトゥル・フォン・キルシュバオム中尉■

 自分の乗るザ○を見ながら、ずっと考えている。
 なぜ、皇太子殿下は自分に、レーザー水爆弾頭を与えたのだろうか、と。
 これを持って、私にどうしろというのか……。

「キルシュバオム。ここにいたのか」
「ヴルツェルか……」

 背後から声を掛けられ、振り返るとヴルツェルがいた。
 手には安酒を持っている。高級士官が飲むような酒ではない。街場の居酒屋で、飲まれるような度数の高い酒だ。だが、俺達にはこちらの方が似合うのだろう。
 薄いブラウンの髪が、暗いハンガーに紛れ、黒髪のように見える。

「ザ○を見ていたのか?」
「ああ」

 うんっと、差し出された酒を受け取り、一口飲んだ。
 キツイ。あいかわらず、キツイ酒を飲んでいるな。

「出征する前に、な。故郷のクラインゲルトから子爵様が連絡してきた。笑えぬな。俺のような高々中尉ふぜいに、帝国貴族であるクラインゲルト子爵が自ら、頼むだとさ」
「……そうか」

 ヴルツェルもザ○を見上げている。
 何を思っているのか……。

「皇太子殿下の言ったとおりだ。オーディンに来てはっきり分かった。辺境と中央では、これほどまでに違うのだという事が。辺境では皇太子殿下の改革に、かなり期待をしているらしい」
「だろうな。俺の故郷も同じだ。貧しい辺境で終わりたくなくて、オーディンの士官学校に入った。こいつに乗る事になるとは、思ってもいなかったが」
「もっと早く、改革をしてくれていれば、良かったのにな」
「それは……」
「分かってはいるんだ。皇太子殿下といえど
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