第九十四話
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ートリッジはライダーの前ではまだ使わない方が良いだろう。
俺はイリヤからそこそこ大量の魔力をくみ上げると、それを右手に集めた。
俺は膝を着き、右手を地面に着けると能力を発動する。
『星の懐中時計《クロックマスター》』
俺の魔力がこの部屋に居る全ての者へと伸びて行き、その形を元に戻す。
凄惨たる光景に切り刻まれていた子供達は何事もなかったかのように健康な体へと戻っていく。しかし、俺には失った命を戻す事は出来ない。
体は元に戻る。しかし、魂の篭らない肉体は直ぐに活動を停止するだろう。
「なんだよ、何が起きているんだよっ!」
「坊主、良く見てみろ。あれは蘇生させているのでは無い。元に戻しておるのだ」
「は?それって、時間の逆行?そんな馬鹿なっ!」
「馬鹿なも何も無い。先ずは現実を見んかバカ者め」
さて、そろそろ全ての子供が元に戻るだろう。しかし、その半数以上がすでに帰らない。肉体だけが元に戻っているだけだ。
「余の戦車に乗せて地上へと運ぼう。亡くなった子らも一緒にな」
気を失って倒れ伏す子供達を見てライダーが言う。
まだ暖かい、しかしその生命活動の終わっている子供達と、まだ生きる事が出来る子供を乗せライダーの戦車は来た道を引き返す。
その道中には会話は無く、ただキャスターへの怒りだけが有った。
夜の公園へ子供達を下ろすと交番へと電話し、保護を頼む。これで生きていた子も死んでいる子も親元へと戻れるだろう。
これ以上は俺達には出来ない。
子供達が保護されるのを遠目で眺めた後、ライダーが言った。
「こうも胸糞悪い事の後だと酒が呑みたくなるな。余はこれから酒宴を開こうと思うのだが、小娘とチャンピオンもどうだ?」
「ライダーっ!?」
「そうね、気分転換しないと私も気分が悪いわ」
ライダーの奇行を止めるように叫ぶウェイバーと同意するイリヤ。
「先ずは酒を手に入れねば成らんな」
ライダーはマスターの叫びは無視して戦車を消すと繁華街の方へと向かって歩き出した。
「ライダーっ!ちょっとまてよこのバカは〜っ」
「わたしたちも行きましょうか、チャンピオン」
「はいはい」
大またで歩くライダーに小走りで付いていくウェイバーを俺とイリヤも追いかけた。
酒屋でワインの樽を買い付けると言う暴挙に出たライダーはその酒樽を担ぎ一路市街地へと戦車を向けた。
「あ…この先は…」
「なんだ、おぬしらもこの先に何か有るのかは知っていたのか」
イリヤの呟きにライダーが返す。
それは知っているだろう。
結界が施してあるはずのアインツベルンの敷地を強引に割って入り、茂っている森林をその戦車で薙ぎ倒して行く。
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