第九十四話
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責任は全て私が負う。…だから、桜を助けてっ」
嗚咽交じりの懇願。桜は此方を不思議そうに見つめているが、その表情はのっぺりとしていて生気を感じられない。
本当はもっと快活なはずの少女だったのだ。それを大人の勝手な思惑で失わされた。だから今回も私の勝手で彼女は変わるのだ。
チャンピオンは最後まで渋っていたが、涙を流す私に終に折れたようだ。
チャンピオンが桜の瞳を除き見ると、桜の意識が遠ざかっていった。催眠暗示系の魔術か何かだろうか。桜にかまっていた私には良く分からなかったが、チャンピオンならそれくらい簡単にやるだろう。
「ここは空気が悪い。用事も済んだのなら帰ろう」
そう言ったチャンピオンは何かの魔法陣を展開したかと思うと、一瞬で私達は衛宮邸へと転移していた。
「うそっ!」
「転移魔術…」
そう言えば以前も衛宮くんを転移させていたっけ。現代魔術師では不可能に近いそれもチャンピオンにしてみれば児戯に等しいようだ。
何ていうか、魔術師たちが持っている尊厳と言うか、プライドと言うか、いや一般人とは違うと言う優越感と言うべきかもしれない。それらがチャンピオンを前にすると全てボロボロに打ち砕かれる。
普通のサーヴァントは良い。なんだかんだでこの世界の法則で説明が付く存在だ。時間を掛ければ宝具と同じ効果を得る事は可能なのかもしれない。しかし、同じ魔力を使っているはずのチャンピオンの技術を理解しようとすればおそらく魔術の概念を捨てなければならない、そう感じてしまう。
なんと言うか、魔法っぽいけれど、SFXっぽい技術なのだ。彼らの魔法も、その武器も。…だって、彼らの武器って弾倉ついているし…放たれる魔法はビームよね。
と、脱線しそうになった思考を元に戻し、チャンピオンを見る。
チャンピオンは私から桜を抱き上げると、いつの間に持っていたのかバスタオルで彼女を包み、その右手を桜の体へと押し当てる。
すると一瞬で桜の体に変化が訪れた。
青み掛かった髪は綺麗な黒髪へと変化し、彼女の体が一回り幼くなった。おそらくチャンピオンが桜の時間を撒き戻したのだろう。
「しばらくすれば目も覚めるだろう」
そう言ったチャンピオンは私に桜を返すと用事は終わったとイリヤの所へと戻っていった。
「ありがとう、チャンピオンっ!」
「俺が出来るのはここまでだよ」
うん。後は私がやらないといけない事だ。助けると決めた。だったら最後まで助けて見せろとチャンピオンは言っているのだ。
絶対最後まで桜を助けてみせる。そう心に誓うのだった。
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