第二部 文化祭
第25話 会いたくて
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「キリト君、本気でやって!」
アスナの声が飛んでくる。
「いや、でもさ……」
「キリト君、以前に比べて腕落ちたんじゃない!? やる気あるの!?」
──時は数分前に遡る。
「おい、誰か付き合ってくれ!」
俺は教室にて大声で叫んだ。クラスメートは呆れ顔で言う。
「……桐ヶ谷、そんな焦んなくても……」
「ち、違う! これは剣の習練に付き合ってほしいという意味で」
「お前とやり合えるやつなんてそうそういるかよ」
クラスメートがからからと笑う。
「……わたし、やってあげてもいいよ」
少女が栗色の髪を揺らし、席から立ち上がって言った。
「君の相手になんてなるかどうかわからないけど、一応授業ではいつもペア組んでるんだし」
「いや、でもそれは……」
「なにか問題でも?」
──問題ありありなんですよ、これが。
「結城、仕方ないだろ? なんたって桐ヶ谷は結城のこと」
「な、なに言ってるんだよ!」
俺は勢いでクラスメートを突き飛ばした。
「問題ないなら、早くグラウンドにでも行きましょ。それとも、わたしじゃ到底相手にならないとか思ってるの?」
悲しそうな目で見つめられて断れるはずもなく、俺は言われるがままにここへ来てしまった。
──そんなこんなで今に至る。
以前はそんなことなかったのに、アスナ相手だとなんだか力が入らないのだ。
「……ボーッと……しないッ!」
アスナはよく通る声と共に、俺の剣を弾き飛ばした。
「……解った。わたしとじゃ真面目にやってくれないんだね。本当に相手にならないと思ってるんだね。じゃあ直葉ちゃんでも呼べば? わたしはもう帰るから」
「ちょ、待っ……!」
十分真面目にやっているつもりだ。なのに、何故──。
*
「お兄ちゃんがあたしに習練付き合ってほしいなんて、珍しいね。けどあたし、簡単に負ける気はないよ」
直葉は笑顔で言い──地を蹴った途端、その表情は消え失せた。
「お兄ちゃん……知ってる?」
激しい攻防を続ける中、直葉が訊いてきた。
「……なにを?」
「あたしはお兄ちゃんとは違って、今年──中3で、アインクラッドに編入してきた」
「……そうだな」
通常は年少から、初等部1年から、中等部1年から──と、キリのいい学年で入学するものなのだが、直葉は今年の4月に編入してきた。言われるまでもなく、もちろん知っている。
「……どうして、たいして頭もよくないあたしがこの学園に編入なんてできたのか……わかる?」
俺は直葉の攻撃を、剣を盾にして防いだ。
アインクラッドは私立校なので、偏差値は少々高い上に、なにより世界一の戦闘の強さを誇っている
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