暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十二 〜偽物〜
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ん?」
「それ以上偽りを重ねるなら、その首、永遠に胴と別れる事になるが?」
「い、いくら太守様かて、やり過ぎちゃいまっか!」
「まだしらを切るか。偽物という根拠、それは私自身が証人だ」
「は、はは、太守様。なかなか、面白うおますな。あ、こうしまひょ。太守様に、売上の三割、差し上げますわ。悪い話やおまへんでっしゃろ?」
 ……如何に私でも、我慢の限度という物がある。
 衆目がなければ、確実に斬り捨てているところだが……。
 と、その時。
「どけどけ! 何事か?」
 兵の一団が現れた。
 今日の警備担当のようだ。
「おお、土方様。如何なさいました?」
「……この者らを、即刻引っ立てよ。牢にぶち込んでおけ」
「罪状は何でしょうか?」
 兵士は、落ち着いて確認する。
 それを見て、私もどうにか、怒りを抑え込んだ。
「偽物販売による不当な荒稼ぎ、乱暴狼藉にその教唆、まずは以上だ。後は取り調べれば良い」
「ははっ!」
 兵士らは、手際よく連行していく。
 だが、店主は納得がいかないのか、抗議の声を上げる。
「ま、待っておくんなはれ! 偽物販売やなんて、言い掛かりでおます!」
「まだ言うか!」
 思わず、私は一喝してしまう。
 それに怯んだのか、店主は漸く、大人しくなった。
「石田散薬は、我が生家に伝わる秘伝薬。その製法を知るのは、この大陸では張世平のみの筈だ。大方、張世平の成功を見て、本人の許しも得ずに粗悪品を模倣したのであろうが。違うか?」
「んな、アホな……」
 私が決めつけると、店主はガクリ、と項垂れた。
「連れていけ」
「はっ!」

「堂々と、太守様のお膝元で偽物を売るとは……」
「呆れて物も言えませんね。……あ、これお返しします」
 愛里はそう言って、国広を捧げる。
「見事な腕だ。流石であった」
「い、いえ……」
 恥じらいがあるのか、愛里は頬を染めた。
「元皓。愛里の事、お前に説明する間がなかった。許せ」
「いえ、それは構いません。それにしても愛里さん、強いですね」
 だが、愛里は頭を振るばかり。
「わたしの剣は、本当の強さはありません。戦場では愛紗さんや彩さん達にはまず敵いませんし、一対一なら……」
 と、愛里は私を見て、
「歳三さんには絶対に勝てません。あの殺気を見ただけでも、良くわかりました」
「……いや。愛里はそれで良い。此度はお前の腕前を確かめたかったが故に、敢えて私は手を出さなかった。だが、お前の本分は文官、剣を振るわずとも良い」
「……はい」
 愛里と元皓が、頷いた。

「あの……太守様」
 列に並んでいたらしき老爺が、おずおずと話しかけてきた。
「何か?」
「真の石田散薬、太守様が発案されたとは、真の事ですかの?」
「正確には生家の秘伝だが、事
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ