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友人フリッツ
第一幕その三

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第一幕その三

「今日だったか」
「そうだよ。今日だよ」
「今日が君の四十歳の誕生日なんだよ」
「ふうむ。やっと思い出したよ」
 半分他人事の様に呟いたフリッツだった。
「僕の誕生日は今日だったね」
「そうそう」
「それでなんだよ」
「有り難う」
 あらためて礼を述べるフリッツだった。
「それはね」
「それで今度だけれど」
「若いカップルが結婚するんだ」
 二人は絵を渡してから今度はこう彼に話してきた。
「今度ね」
「それも伝えに来たんだけれど」
「ああ、それだったら」
 フリッツはそれを聞いて気さくに応えた。そうしてこう言うのだった。
「お金を貸すよ、その二人にね」
「貸してあげるのかい?」
「彼等に」
「何をするにもまずお金が必要だからね」
 彼はここでも気さくに笑っていた。
「だからね。期限は」
「期限は?」
「何時にするんだい?」
「僕が二百歳になった時でいいよ」
 こう二人に話すのだった。
「その時にね」
「おお、それはまた」
「太っ腹だね」
「ははは、褒めたって何も出ないよ」
 フリッツは二人の褒める言葉に笑って返した。
「何もね」
「いや、本当に」
「凄いよ」
 しかし二人はそれでもこう言うのだった。
「こんなに気前がいいなんて」
「そんな人いないよ」
「そうかな。僕は別に」
「本当だって」
「彼等も喜ぶよ」
 二人はこうもフリッツに言う。
「本当にね」
「これは間違いないよ」
「彼等か」
 その彼等が誰なのかはもう言うまでもなかった。フリッツはそれを聞いて顔を暗くさせた。そうしてそのうえでこんなことを言ったのだった。
「彼等も可哀想だよ、君達もね」
「僕達もかい?」
「どうしてだい?」
 フェデリーコとハネゾーは今の彼の言葉に首をそれぞれ左右に傾げさせた。実に好対称である。彼等が話している間にカテリーナは昼食の用意を進めていた。
「何でだい、それは」
「またどうして」
「愛の為に心を痛めるからだよ」
 だからだというのだった。
「本当に気の毒なことだよ」
「いや、それは違うね」 
 しかしここでダヴィッドがフリッツに言ってきた。
「それは君もだよ」
「僕も?またそんなことを言うのかい」
 そう言われても笑うだけのフリッツだった。
「僕はそんなことは絶対にだね」
「この世に絶対のものはないさ」
 こう反論するダヴィッドだった。
「神の御教え以外にはね。神様もそれぞれだけれど」
「ううむ、だとすると」
「フリッツ君も遂に年貢の納め時かな」
 フェデリーコとハネゾーは少し冗談を交えて述べた。

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