それぞれの理由
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も、ない方が自然でしょう。平然と敵や味方を殺せるわけがないわ。ああ言っているけど、アレスもそうじゃないかしら」
怪訝そうに見上げるテイスティアに、小さく首を振る。
「別に覚悟がない事が悪いわけじゃない。怯える事が悪いわけでもない。誰もがそう。ようはそこで逃げるか、逃げないかじゃないかな」
「……どうして、先輩は逃げずに戦えるのですか」
「参考にはならないわよ」
「教えてくれませんか」
少し迷ったようにコーネリアは口を止めた。
テイスティアが見上げている。
真剣に聞き逃さないとする様子に、コーネリアは苦笑する。
「私は士官学校に入った理由なんて、あなたみたいに大きな理由があったわけじゃないわ。ただ中等科の時に好きだった人が、士官学校を受験したから。ま、その人は落ちたわけだけど。アレスも言っていたでしょう。別に士官学校に入った理由――戦う理由なんてどうでもいいのよ。どんな理由だって、恐いものは恐いのだから。でも」
と、コーネリアは小さく呟いてフェンスにもたれかかった。
「入ったら入ったで、きついし、辞めたいと何度も思ったわ。その上、過去の戦いを見たら見たで、酷い戦いがいっぱいあるわけよ。あまりに酷い艦隊運用とか見てると、私ならもっと救えたのにってね。そう思ったら、もう逃げられなくなった。私は誰よりも艦隊運用には自信があるし、その自信が私を支えてくれる」
いまだに固まるテイスティアに、コーネリアは笑いかけた。
言葉はでないものの、それだけかという表情が隠れている。
きっと逃げない理由に、凄い理由があると思っていたのだろう。
あるいは、全て解決する完全無欠の回答か。
そんなもの存在するわけがないのに。
「その……ありがとうございます」
「でも、勘違いしないでね。私が言った理由は私だけの理由よ――あなたにはあなただけの理由があるわ。それを私が教えることはできない、自分で考えなさい」
「ごめんなさい」
慌てたように謝ったテイスティアに、コーネリアは微笑む。
「謝らなくていいわ。別にいますぐに見つけろってわけじゃないし」
「え?」
「そんなに簡単に人を殺す理由を見つけられても驚くわ。むしろ、一学年なんて何も考えてないんじゃないの。それは、あと五年間で、ゆっくりと見つければいいの。それが普通だし、アレスが早熟し過ぎているのよ」
呆れたような言葉に、テイスティアは目を白黒させている。
「いま答えが見つからない事が悪いわけではないのよ。この五年間に探せばいいだけのこと。それにこれは私のことだけれど、誰にも負けないものがあれば結構楽よ。自信にもつながるわ」
「でも、僕は……」
「あなたにしかできないことだってあるはず。そのヒントは、もう貰っているでしょう」
くすっと笑
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