それぞれの理由
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したのは……」
言葉に迷っているというよりは、考えを言葉にするのが怖いように、コーネリアは見えた。
それでもテイスティアは――今度は逃げださずに、真っ直ぐに答えた。
「自分の覚悟がないことに気づかされたから」
その表情は無力さに気づいた、よわよわしい少年のものだ。
儚くひどくもろい。
それでも恐々としながら、呟かれた言葉。
まだ十五歳だものね。
あの一つ下の後輩を見ていれば忘れてしまいそうになるが、テイスティアはまだ十五歳なのだ。
それを自分と同じ年齢――いや、彼に至っては実年齢より遥かに成熟しているようだが――と同じように求めても無理があるだろう。
その点で言えば、アレスの言葉は正論であり、間違えているとも言えた。
他人の死への責任を感じるには早過ぎると思う。
けど、今ではないと遅過ぎなのよね。
テイスティアに覚悟を求めるには早過ぎる――けれど、覚悟を求めなければ、現在の成績では、彼は落第することになる。
それならばと、アレスは今それを伝えることを考えたのだろうが。
下手をすれば自分の評価を下げることになったかもしれない。
ワイドボーンのように何も言わなければ良かったのに。
優しいことだと言った、ワイドボーンの気持ちがコーネリアは今になってわかった。
実際に、アレスの事がなければコーネリアもこうして動こうとは思わなかっただろう。助けを求められれば助けるかもしれない――だが、テイスティア自身は助けを求めることすらしていなかったのだから。
「あの……」
何も言わないコーネリアに、テイスティアが言葉をかける。
不安げに揺れる瞳には、怒られることへの恐怖があるようだった。
別に怒るつもりはないと、小さく首を振った。
すぐに言葉が出てこないのは、回答が思いつかなかったからだ。
コーネリアは考えながら、テイスティアに近づいた。
小さく胸を押さえる小動物のようだった。
彼が果たして戦場に行くことが出来るだろうか。
戦場で最善の判断を行い、敵を殺すことを決断できるだろうか。
覚悟がないと言った彼では、とても無理なことのように見えた。
そんな彼を戦場に狩り立たせるのか。
その必要があるのだろうか。
――結局は、この子次第なのよね
小さく息を吐きながら、フェンス越しに下を見れば――明りのない闇が広がっている。遠くに街灯りが見えた。おそらくは金曜日の今日であるから、あの街に向かって何人もの脱走兵がいるのだろう。同時に帰ってくる彼らを待ち構える巡回兵も増える。
今日の見回りはアレスらしい。
脱走兵にとっては酷く可哀そうなことだが。
「私にも全ての覚悟があるわけじゃないわ」
「そんなこと」
「ないと思う? で
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