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ヴァレンタインから一週間
最終話 夜景
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んだな」

 大地に転がされた状態のラーフに対してそう告げる俺。俺的に言うと異界化した空間で、最初に出会った時に、この黒き破壊神が浮かべていたような漢の笑みを浮かべて。
 但し、笑みに関しては完全なる自己申告。そう見えたら良いな、と言う願望のような物。

 俺の対応を、笑みを浮かべる形で見つめるだけの亮。無味乾燥。俺と黒き破壊神の会話など一切興味を示そうとしない少女たち。
 そして、何故か期待に満ちた瞳で俺を見つめる黒き破壊神。
 もしかすると、俺は前世でも……。

 俺ならば有り得る可能性。そして、その約束を守る為に今ここに俺が居るのでは。

「じゃあ、またな」

 しかし、口から飛び出し掛けた台詞を止める方法などなく――――
 伝説の黒き破壊神ラーフが、その言葉を聞いた瞬間、満足気に首肯いたのでした。


☆★☆★☆


 既に、彼女の左手に刻まれた人魚姫と言う意味のルーンが残されているのは確認済み。矢張り、彼女の未来に立ち込めている暗雲は、今回の羅?(ラゴウ)星事件が原因などではなく、別の原因が存在していると言う事。
 これで、後何度と成るか判りませんが、この世界の彼女の元に、俺は召喚される事が確実と成ったと言う事です。

 その様に考えながら、普段よりも少し冷たい有希の左手を感じる。
 そう。戦いの場と成った東中学を出る直前に繋がれた手は未だ解放されず、彼女のやや緊張した心を俺に伝えて来ていた。

 羽虫ひとつ飛ばない冬の街灯の下、彼女の冷たい左手を握りしめ、ゆっくりと歩み行く二人。
 深夜と言うべきこの住宅街の道を進むのは俺たち二人と、それぞれの影。
 追い掛けて来るのは二人の足音だけで有った。

「……あなたに連れて行って欲しい所がある」

 この道行きが始まってから、何度か迷いを発した後に彼女が初めて言葉を発した。
 その時に感じる決意。

「ええで。俺が連れて行ける場所ならば、何処にでも連れて行ってやる」

 この世界にやって来てから初めて有希からの願い。それに、羅?(ラゴウ)星事件が解決した以上、俺がこの世界に居られるのもあと僅かな時間。
 おそらく、今回の有希からの願いを叶えるのが最後の仕事となるでしょうから。

「わたしを蒼穹に。この街の蒼穹に連れて行って欲しい」


☆★☆★☆


 北より吹き付ける冷たい風が、腕の中の少女の髪の毛を僅かに弄った。

 天壌無窮(てんじょうむきゅう)。永劫に続く氷空。そして、果てなく続く世界(地球)
 中天には蒼き女神が地上に向かい蒼白き矢を放ち、遙か西の海上には紅き女神が朧なる光芒を纏い沈み行く。
 ここから見上げる蒼穹は、まるで上質な黒きビロードに散りばめられた宝石の如き煌めきを放つ星々に
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