最終話 夜景
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の瞬間、明日が今日と言う日に変わった。
時間的な意味ではない。二人の間に明日が始まったと言う事。
一歩、一歩と蒼き光りを発する魔法陣に向けて歩みを進める俺。
彼女の視線を背中に。彼女独特の雰囲気をより強く感じながら……。
後一歩踏み出せば、俺と彼女の住む世界が変わる。その境界線上に立ち、一度上空の蒼き女神に視線を送った後、振り返って彼女……。長門有希と言う名前の少女を見つめる。
月下に佇む少女の姿を自らの瞳へと最後に映す為に。
最後まで表情を変える事もなく、真摯な瞳で俺の背中を見つめていた少女の視線と、振り返った俺の視線が絡み合い、そして、繋がる。
その瞬間、俺が笑う。風花が舞い、月と静寂に支配された世界の中心で俺が笑う。
そうして、
「行って来るな」
一時的な別れの挨拶。再び逢うまでの次元を超えた固い約束の言葉。その言葉は、確かな温もりを持って俺の目の前を白くけぶらせた。
微かに。本当に微かに首肯く有希。彼女が発するのも別れには相応しくない陽の雰囲気。
静かに、本当に静かな彼女に相応しい声で、
「行ってらっしゃい」
……と伝えて来る。
その言葉を最後まで心に刻み、彼女の作り出した吐息が世界を白くけぶらせる様を瞳に宿した後、
俺は再び、次元世界の旅人へと成って居たのでした。
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