最終話 夜景
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何時の間にか世界は通常の夜を取り戻し、中天の辺りには満面の笑みを地上に魅せる蒼き偽りの女神の姿が――
其処から西に目を転ずると、そろそろ彼方……海の方向へと沈み行く雰囲気の、半分よりは少しその表情を余分に魅せている紅き女神さまと、地球より遠ざかって行く軌道に乗ったと思われる彗星の大きく尾を引く姿が存在していた。
俺と有希が異界化した世界から、この通常の理……。通常の冬の氷空が支配する世界に帰還を果たしたと言う事は、取り敢えず巨大彗星激突による世界滅亡の危機を脱する事に成功したのでしょうね。
もっとも、未だ蒼き偽りの女神が中天に存在して居ると言う事は、根本的な危険は未だ排除されていない、と言う事なのでしょうが。
そう考えながら、ゆっくりと周囲を見渡す俺。
ここは異界化した世界と同じ中学校の校庭。しかし、戦闘の際に破壊されたはずのバックネットは無傷で健在。
更に戦闘の余波で出来上がったはずのクレーター状の巨大な穴や、焼け焦げた痕。高熱に晒される事に因り、熱せられた土自体がガラス状の物質に変わっているなどと言う現象を確認する事は出来ず、ただ、普通の学校のグラウンドが存在するだけの場所で有る事は確かで有った。
しかし、先ほどまでの戦いが夢や幻では無かった証拠。全身を銀色の縛めに封じられた黒き破壊神が、俺と有希の目の前に存在して居ましたが。
普通の人間……。いや、それどころか駆け出しの道士クラスならば簡単に呪い殺されそうな瞳で俺の事を見上げる黒い男に近付き、素早く残った計都星……ケートゥの仙骨を封じて仕舞う。
これで、この場からラーフが逃げ出す可能性は、ほぼゼロと成ったと言う事です。
後は、この晴明桔梗印結界内に、玉砕覚悟で名の有る邪神が突っ込んで来ない限り、この破壊神殿は、再び太陽星君の牢獄へと囚われる事となるはずです。
「もう知って居ると思うけど、その鎖はオマエさんの神気を糧にして締め付けるオマエさん専用の鎖。如何に、伝説に名を残すアンタでも引き千切るのは無理やで」
そうラーフに対して話し掛ける俺。別に勝ち誇る訳でもなく、事実のみを語る者の口調で淡々と。
その俺の傍らに、ゆっくりと歩み寄って来た紫の髪の毛を持つ少女が、この冬の夜に相応しい雰囲気で静かに並ぶ。
その彼女を、少し驚いたような。しかし、悟ったような表情で見つめるラーフ。
もっとも、悟られて当然ですか。最後の場面で俺に出来たのはヤツの身体に傷を付ける事だけ。しかし、次の瞬間には、ヤツの身体に突き立つはずのない金属製の針が突き立って居たのですから。
「オマエさんの目の前に立つ人間はかなりの臆病者でな。弱点を放置したまま、彼女を戦場に連れ出せるほど、自分に自信が有る訳ではなかった」
本来ならば、ず
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