第三十八話 少年期【21】
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害物へ真正面からぶつかっていく少女Dは、一切減速をしない。瞬時に向かってくる飛来物を補足し、最小限の動きで間合いに入ったものに拳を打ち込んでいく。自身に当たらないものはしっかり見抜き、目もくれない。そして自身に仇なす物は避けることすらせず、塵へと変えている。
俺は今のところ避けるのに専念し、前に進んでいる。時々当たりそうになったものを、事前に用意しておいた魔力弾で相殺させる。だけど、この方法だと彼女には追いつけない。回避率はコーラルやリニスからお墨付きをもらっているが、下手に突っ込めば被弾は確実なのだ。1発でも当たれば、おそらく彼女にはもう追いつけない。
飛来物の威力はそれほどないから、少量の魔力で簡単に撃ち抜ける。下手な鉄砲数撃ちゃ当たる理論で、威力より数を増やして前に進む手もある。だけどそれでも当たる可能性がなくはない。俺には彼らの様な器用さも技術もないのだから。
もう諦めて2位を目指そうか。彼女の方が俺より上なのはわかっていたし、今のままいけば、このゾーンを少女Dよりは遅くなるが抜けられないわけではないのだから。ゴールさえすれば、ポイントは入るし、1位にこだわる必要性はない。
そうなんだけどな……。
「無茶のしすぎや羽目を外し過ぎるのはまずいだろうけど、……無理ぐらいはしねぇとかっこつかないよな」
食らい付こう、俺の思考はすぐに答えを出した。俺は周りに展開していた魔力弾を解除し、新たな術式を組む。一発勝負だ。この魔法を発動できるかはわからないが、成功すれば彼女に追いつける。要は全方位から飛んでくる飛来物に俺が当たりさえしなければいいのだ。たとえどこから飛んできたって、俺のもとに来なければ問題はない。
「プロテクション!」
防御魔法を発動させ、そのまま前方に突っ込んでいく。昔管理局のお姉さんに見せてもらった魔法であり、コーラルが得意とする魔法だ。この魔法は一方向のみをガードする魔法のため、同時に別方向から攻撃が来るこの状況ではあまり意味がなかった。
だったら数を増やす。俺はデバイスの出力限界までいくつもの防御魔法を組み立てていく。自分の前に右に左、上も後ろも。全方位。バリアの耐久力はかなり低くなるが、あのボールの威力程度なら向きをそらすだけでもできるだろう。器用さも技術もないなら、力押しでいってやる。すごい勢いで魔力が減っていくが、俺の魔力量の多さはお墨付きなんだよ。
全方位に発動した藍色の魔方陣を纏いながら、俺は真っ直ぐにコースを走り抜ける。前を行く少女Dと一瞬目が合い、目を見開かれたがすぐにその顔からは嬉しそうな表情が見えた。発動した魔方陣に飛来物が当たっては弾かれていく様子を確認しながら、俺は彼女を追いかけていった。
俺はこの時夢中で気づかなかったが、外野から見
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