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少女1人>リリカルマジカル
第三十八話 少年期【21】
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イスはブーストデバイスといって、補助や特殊型の魔法に対応しやすいものだ。そしてデバイスから光が走ったと思ったら、鈴を鳴らすような音が彼女の作った魔方陣から響き渡った。

 彼女の足元に髪と目と同じ紫の魔方陣が展開し、それに自身が包み込まれていく。紫の子に飛んできていた飛来物の数は3つ。しかしそれらを鮮やかな動きで彼女はすべて避けてみせた。まるで背中に羽が生えているかのようなフットワークに俺は目が点になる。ダンスを踊るかのような軽やかなステップで、障害など意に反さず走り抜けていった。

「いい勝負ね。これは的当てで決まるかしら」
「すげぇ器用だな、2人とも」

 おそらく2人が飛びぬけているのだろう。他の子は1,2度は被弾していたり、走る速度が遅くなるものなのにそれが一切ない。トップに2人が躍り出たのは自然な流れだった。だけど身長が低い分、少年Eの方が歩幅が短い。足の速さは、一歩紫の子の方が速いようだった。

 そして結果としては、その速力で勝敗は決してしまった。2人とも魔法の力量は同じぐらいなのだから、残るのは身体能力だけだ。的を当て終わった後の直線距離で少年Eは負けてしまった。彼女にかかっていたブースト魔法は飛来物を避ける以外で使われていなかったから、反則もない。純粋な足の勝負で及ばなかったのだ。

 走り終わった少年Eの表情はほんの少しだけど、悔しそうに唇を噛みしめていた。1年友人をやっていたからこそ気づけるぐらいの小さな変化。それでもお互いに走り終わった後、相手と握手を交わし合って健闘を称えあっているようだった。



「それでは、第5レース。位置について、よーい……」

 パンッ、と魔法によって作られた雷管の音が俺の耳に入った瞬間、勢いよくスタート地点から足を踏みだした。俺は頭の中でこのストレージデバイスに登録されている魔法を反芻し、出力の調整を行う。いつもはコーラルにまかせてしまっていた部分だったので、今のうちに術式を組んでおかないと俺1人じゃ間に合わないかもしれない。

 俺の右手には少女Dが走行しており、彼女との差はほとんどない。むしろ他の子どもと足の速さで差が広がっているぐらいだ。これ以上はよそ見をしたらまずいと考え、俺は顔をコースへと戻しておく。そろそろ例のゾーンに来たと思ったその時、少女Dに向かい飛来するボールを目が捉えた。

 紫の子のように避けるのか、少年Eのように魔法を放つのか。彼女の対処方法によって、俺も動き方を変える必要があるかもしれない。そう思って俺は横目で彼女を確認する。

「はぁッ!」

 すると少女Dが、拳に魔力を通して、飛来物を文字通り打ち抜いて正面突破して行ったのを目撃したのだった。


「……ちくしょう! 全体的にステータスが高すぎんだよ!」

 堂々と障
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