第三十八話 少年期【21】
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視線の先には、何故か不自然にぽっかり空いた空間があった。そこには女性が1人と緑の球体と猫という組み合わせ。先ほど俺が言った家族の特徴通りだった。
「ふふふ、ついに……ついにこの日が来たわ! この日のために吟味して手に入れた最新のビデオカメラにカメラ。店で何時間と粘り続けたことで最も優れた画質と色の正確さを選び抜き、ワイド設定も狭くも広くも綺麗に取れ、画面の歪みもない一品。そして三脚に何度も取り付けて確認したから、安定性も問題なし。さぁ、アルヴィン、アリシア! いつでも来なさい!」
『ふふふ、腕が鳴りますね…。これは今までに蓄積されてきた僕の盗さ……ではなく、撮影スキルを遺憾なく発揮するべき場所。もう1人のマイスターに願い出たことで、最高の画質が取れるように改造もされましたし、準備は万端です。さぁフィックスだろうが、パンだろうが、どんな構図でも撮ってみせましょう!』
「……にゃ…う」
どうしよう。俺、あんなにも肩身の狭そうなリニスを初めて見た。
「そしてリニス。あなたはこのカメラを首に巻くのよ!」
「にゃぁッ!?」
『なるほど、さすがはマイスタープレシア。リニスさんの体格をフル活用した撮影とは考えましたね。彼女の俊敏さがあれば、ベストショットを切れる場所にすぐに向かえるという訳ですか』
「えぇ、そうよ。私が大地に立ちレンズを構え、コーラルが空から様々な構図を映し出し、リニスの風のような走りによる柔軟な動き。この布陣に逃せぬ被写体はないわ!」
「……みぃー…」
「……ごめん、アレックス。先に行っていてくれるか。―――ちょっと沈静してくる」
「ううん、いいよ。いってらっしゃい」
こういうイベントだからこそ、羽目を外し過ぎてはダメなんだな。今日俺はそれを学び、心に刻んだ。
******
「おーい、少年E。徒競走ってここに並べばいいんだよな」
「うん、ここ」
さて、あれから競技は着々と進んでいった。現在午前の競技の半分を消化し、俺たちが出場する『玉入れ』と表現運動も終わったところだ。全体的な運動量はいつもより少ないはずなのに、身体が少しばかり重く感じる。やはりこれだけ大勢の人の前だと気疲れぐらいするよな。
そして午前競技の後半。俺と少年Eは校内に3つあるグラウンドの内、シミュレーター機器が設置されている第2グラウンドに来ていた。ここに置かれている機械はただの機械ではない。思い出すのは、前世で読んでいた小説に出てきたVRMMOという言葉。確かバーチャル・リアリティだっけ。それのある意味実現版のようなものがこの機械なのだ。
本来ならあるはずのないものを、ホログラムとしてその場に映し出す。それだけなら地球でもできるが、ミッドのホログラムはしっかり見えるし、実際に触れ
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