第五十話 政府の判断その十二
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「しかし女性的です」
「活発であっても」
「悪い方でもないですし」
「ですね。何か最近よくですね」
「よくとh?」
「大学だけじゃなくて高等部や中等部でも人気があるみたいですよ」
「お奇麗だからですね」
その理由はすぐにわかった大石だった。
「だからですね」
「はい、それでです」
「ですね。あれだけお奇麗ですと」
「僕も友達によく紹介してくれって言われますし」
上城もそう言われているというのだ。
「本当に奇麗な方ですね」
「ですね、あの人は」
聡美の話もされた。そしてだった。
上城は大石と別れ彼だけになってもこれからのことを考えていた、スペンサーの登場は彼にそうさせるだけのものがあった。
聡美は今は静かにキャンバスライフを送っていた。だが。
アーチェリー部でそのアーチェリーを放ちながらそのうえでだった。彼女は今あの声と二人で話をしていた。
周りには他の部員達もいるが誰も二人の言葉は聞こえなかった。何故なら心の中でやり取りをしていたからだ。
聡美は動きやすいジャージ姿で前を見据え弓を引いている。そうしながら声に対してこう言ったのである。
「十人目の剣士ですね」
「ええ」
声は聡美に対して答える。
「この町に来たわ」
「アメリカ人ですか」
「それが何か」
「これまでは日本人だけでしたが」
「日本以外の国にいても不思議ではない筈ね」
「はい」
聡美もそのことはその通りだと返す。
「確かに。これまでの戦いでも」
「あらゆる国から人が集っていました」
「だから今回もね」
「そうした力のある者達にですか」
「剣を授けていったわ」
「これまでの九人はたまたま日本人だったのですか」
アーチェリーを放った。それは的の中央を的確に射抜いた。
そのうえでこう声に答えた。
「そういうことになりますね」
「そうよ。それは貴女もわかっていたと思うけれど」
「わかっていました」
「なら問題はないわね」
「剣士は国籍が問題ではありません」
「その強さよ」
「心です」
ここでは二人の見ているものは違っていた。
「その心こそが」
「貴女はどうしてもなのですね」
「お姉さま、本当にです」
聡美は新しい矢をつがえながら声に対して告げた。
「もうこれ以上は」
「いえ、あと少し」
声の言葉の色は切実なものだった。
「あと少しだから」
「続けられるのですか」
「そうです」
切実なだけではない、そこには辛いものもあった。
その辛い声でこうも言ったのである。
「私は何があっても」
「しかし。そうしてお姉さまは気が遠くなる間彼等を戦わせています」
「けれど私にとっては」
「彼等は確かに罪を犯しました」
聡美は目の前の的を見据えながら声に言った。
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