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万華鏡
第三十九話 読書感想文その十二

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「いいわね」
「わかりました、じゃあ」
「今から」
「さて、これからなのよね」
 先輩の目の光が強くなった、その言葉も。
「優勝出来るかどうかはね」
「秋、ですね」
「そこで踏ん張れるかどうかなんですね」
「そうよ、何度か優勝出来そうなシーズンはあったけれど」
 暗黒時代を知っている者はそれだけで大きな違いだと言う、しかしそうでない者にとってはやはり優勝してこそだ。
「それでも毎年じゃない」
「秋に息切れして」
「それで、ですか」
「今年こそはね」
 まさに今シーズンはというのだ。
「勝たないとね」
「駄目だからですか」
「神様への捧げものとしても」
「勿論私達もね」
 先輩のバンドもだというのだ。
「頑張って演奏してね」
「それで、ですね」
「音楽を捧げるんですね」
「何なら優勝するまでね」
 話が延びた、それもかなり。
「毎日皆で一回は六甲おろしを演奏して」
「何か徹底してますね」
「歌も忘れないでね」
 先輩は琴乃にこの言葉も言い加えた。
「勿論ね」
「阪神の優勝の為にも」
「阪神の優勝は日本にとってもいいことでしょ」
「はい、それは」
 琴乃とて阪神ファンだ、ここで違いますと言う筈もなかった。このことは他の四人にしても同じである。やはり阪神ファンだからだ。
「やっぱり」
「阪神が優勝したら皆元気になるからね」
「星野さんの時みたいにですね」
「映画でもあったでしょ、覆面のエースが出て来てね」
 巨人の看板選手だった男を父に持つタレントが主役を演じた、何と彼も阪神は大好きだというから面白い。
「それで優勝させてね」
「あの映画凄かったですね」
 里香もその映画に先輩に応えた。
「それもかなり」
「そうでしょ、実際に優勝したら凄かったから」
「だからですか」
「今年の阪神はですね」
出来れば今年だけでなく」
 今シーズンだけでなくというのだ。
「来年もそれからもね」
「連覇ですね」
「阪神の連覇ですか」
「九連覇どころか」
 巨人がした、この時代の日本は暗黒時代だった。何故暗黒時代なのか、巨人が強い時代はそれだけで暗黒時代になるからだ。
「十連覇して欲しいわね」
「あっ、それいいですね」
「阪神の十連覇ですか」
「それはもうかなりですね」
「もう日本を幸せにしてくれますね」
「巨人の優勝じゃ何にもならないわ」
 先輩は巨人についてはこう言い切った。
「百貨店がバーゲンになる訳でもないしね。皆が喜ぶ訳でもないから」
「ですよね、テレビの太鼓持ちが笑うだけで」
「他何もいいことないですよね」
 テレビの視聴率がさらに減るだけだ、巨人の優勝なぞそれこそ変態が全裸で街を走り回っているものを観る様なものだ、実に忌々しい。
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