第三十九話 読書感想文その十一
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「もっとね」
「そうね、じゃあね」
琴乃も笑顔で応える、そしてだった。
五人は部活に出てトレーニングをして楽器も演奏した。その休み時間に部長に言われた。
「ちょっと五人に演奏して欲しい曲があるんだけれど」
「えっ、私達にですか」
「どの曲をですか?」
「六甲おろしね」
阪神タイガースの応援歌であるこの曲をだというのだ。
「勿論歌ってね。いいかしら」
「いいですけれど何でなんですか?」
ヴォーカルの琴乃が目を瞬かせながら部長に問い返した、二人は休憩中で目を見合わせてそのうえで話をしている。
「六甲おろしなんですか?」
「いや、昨日阪神勝ったから」
だからだとだ、部長はプラネッツの面々に頼むのだった。
「だからね」
「それでなんですか」
「そう、他のグループにも言ってるけれどね」
「六甲おろしの演奏ですか」
「今首位よ、首位」
部長の声は勇んでいた、顔も笑顔である。
「このままいけばね」
「優勝ですね」
「そしてクライマックスシリーズに勝てば」
目も輝いている、そのうえでの言葉だった。
「リーグ優勝、そしてね」
「日本シリーズでも勝てば」
「あの八十五年以来のね」
あの伝説の年から久し振りにだというのだ。
「日本一よ、凄いでしょ」
「その祈願ですか」
「音楽は神様への捧げ物でもあるのよ」
今出した理屈だ、そもそもどの神様に捧げるのかさえも不明だ。しかし部長は強引に主張していくのだった。
「だからね」
「それでなんですか」
「そう、あんた達全員阪神ファンよね」
「まあそうですけれど」
「関西人ですし」
「阪神は好きです」
「かなり好きです」
「野球は阪神です」
五人共こう部長に答えた、そして琴乃も再び言う。
「阪神ファンなのはその通りです」
「じゃあいいわよね」
「けれど今ここで、ですか」
「休憩時間の後でね、練習ついでにいいでしょ」
「ううん、じゃあ」
「いい?六甲おろしよ」
先輩の今の言葉は半分以上命令だった、言葉は強い。
「それ御願いするわね」
「わかりました」
「折角地獄のロードも白星優先でいけたから」
阪神限定のハンデだ、高校野球で甲子園を貸すのでその間ずっとビジターで各球団を回るのだ。もっとも最近は大阪ドームを使うことも多いが。
「後は秋をね」
「このまま乗り切ってですね」
「優勝よ」
目をさらに輝かせての言葉だ。
「日本一だから」
「阪神の日本一ですか」
「ここんところ日本一はないけれど」
八十五年以降である。
「天国の手塚治虫先生も待ち望んでおられるわよ」
「あの人阪神ファンだったんですか」
「そうよ、大阪出身だしね」
それで阪神の不調を嘆いていたこともある。
「まあヤクルトや西武にキャラク
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