第五十六話
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第五十六話 タロが言う狼
タロとライゾウは華奈子と美奈子が新たな転校生について話している時タミーノ、フィガロと共に一緒にいた。それでだった。
狼についてだ、タロは仲間達にこう言った。
「狼って格好いいけれど厳しい兄貴ってイメージなんだよね」
「はい、我々にイヌ科にとっては」
「まさにそうした存在ですね」
同じイヌ科のキツネであるタミーノ、タヌキであるフィガロも応える。彼等も同じイヌ科としてそれで応えたのである。
「頼りにはなりますが」
「厳しいイメージですね」
「同じイヌ科は襲わないことが多いけれどね」
「人間も襲わないんだよな、狼って」
ライゾウはタロ達にこのことも話した。
「そうだよな」
「だから狼から犬が出来たんだよ」
人間が最初に家畜にしたのは犬だ、狼を家畜化して犬にしたことからもこのことがわかる。
「実はそうしたことはしないよ」
「日本では畑を荒らす猪や鹿を食べる益獣でした」
「だから大神だったのですよ」
この『大神』という言葉が中国の『狼』という漢字にかかったのだ。それが日本の『おおかみ』なのである。
「日本は農耕民族ですから」
「決して悪い存在ではありません」
「だよな、おいらも狼って怖いっていうか格好いいイメージだよ」
ライゾウもであった、このことは。
「けれどやっぱりな」
「ライゾウから見ても厳しいよね」
「ああ、猫から見てもな」
「同じイヌ科の僕達から見ればね」
「余計にです」
「厳しいお兄さんなのですよ」
タミーノとフィガロは再びライゾウに話した。
「ですから狼と聞くと」
「少し緊張しますね」
「どんな人なんだろうな」
ライゾウは首を捻ってこう述べた。
「気になってきたな、おいらも」
「厳しい人じゃないといいね」
これがタロの偽らざる感情である。
「本当にそう思うよ」
「そうですね、狼と聞くと」
「どうしても身構えてしまいますから」
タミーノとフィガロの口調はさながら後輩達が厳しい先輩のことを話す様だった、その口調で話してであった。
やがてライゾウにだ、注意する様に告げた。
「狼は気高いです」
「そして厳しい存在ですから」
「おいら達にとってのライオンとか虎みたいなものか」
「それに近いね」
「ああ、そうなんだな」
「うん、そうした存在だよ」
タロは最後にこう話した、イヌ科にとって狼はネコ科にとってのライオンや虎だというのだ。
第五十六話 完
2013・7・18
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