第81話
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見ると言った。
数日して、カエル顔の医者は難しい顔をして言った。
「率直に申し上げます。
今の僕では彼を治す事はできません。」
「どうしてですか!?」
「彼の脳を調べようとしましたが、何故か機械が故障して使えなくなるのです。
まるで、何かに守られているように。
科学の街に住んでいる医者がオカルトのような事を言ってしまって本当に申し訳ありません。
彼を治療する方法は一つ。
これまで通り、何度も話しかけ心をケアしていくしかありません。」
その医者の話を聞いて、秋葉は涙を流しながらその場でしゃがみ込んだ。
竜也は強く両手を握りしめながら言った。
「そんなの分かっているんですよ!!
あなたが言うように私達は毎日毎日、ほとんど恭介と一緒にいて、ずっと話しかけました!
それでも、あの子は何も反応しないんですよ。」
徐々に声が小さくなり、最後には竜也も涙を流した。
カエル顔の医者はこの時ほど、自分の力の無さに恨んだ事はなかった。
だから、自分にできる事を精一杯するしかないと思った。
「私の知り合いの一人に脳の研究などを専門にしている医者がいます。
その人にカウセリングをしてもらうように依頼してみます。」
そう言って、近くにある電話を手に取り、電話をかける。
数時間後、麻生が入院している病室に一人の女性が訪ねてきた。
服装も色の抜けた古いジーンズに何度も洗濯を繰り返して擦り切れたTシャツ、その上から羽織っている白衣だけが新品のカッターシャツを着た女性。
「初めまして、今日から恭介君のカウセリングの担当になった芳川桔梗です。」
そう言って、彼女は竜也に手を差し出してきた。
竜也は手を握り返し、自分達の自己紹介をする。
カエル顔の医者に病状を聞くと、桔梗は麻生に話しかける。
しかし、話しかけても全く反応しない。
それでも、彼女は何度も話しかけていた。
この行為を数日かけたが、何も変化はなかった。
困った桔梗は気分転換も兼ねて、麻生を外に連れ出した。
そして、夕方になって麻生が帰ってくる頃には喋れる程度にまでは回復していた。
二人は喜んだ。
まだ完全に治った訳ではないが、それでも喜んだ。
その後、身体検査をして何も異常がない事が分かって、竜也達は自分の家に戻ろうと思った時だった。
麻生が竜也達に言ったのだ。
「俺、此処に残りたい。」
そう一言だけ告げた。
二人は麻生がこんな事を言うとは思ってもいなかったので最初は驚き、戸惑った。
彼はまだ小学生だ。
その小学生を一人で学園都市に置く事は心配でたまらない。
竜也はまたあの時のように倒れてしまうのではないのかと思った。
だが、意外にも秋葉が麻生の言う通りにさせてみよう、と言い出したのだ。
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