第二章:空に手を伸ばすこと その五
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。なぜ夏候淵の表情は、『私はあんなのには関わりたくないから』と言わんばかりの、必死めいたものであるのか。
それらの答えは城の一角に設けられた、客将向けの一室にて判明した。部屋を前にして首の入った木箱を放り出し、目を回して昏倒する夏候惇。寝台の上にてくんずほぐれつの醜態紛いのせめぎ合いを繰り広げる、錘琳と荀イク。二人を引き離さんと渾身の力を込める、曹操軍の誉れ高く美しき棟梁、曹孟徳。あまりに意味の分からない光景を目にして仁ノ助は茫然とし、そして彼女等の声を耳にしてようやく事態を呑み込んだ。
「はぁ、はぁ・・・ええろがっ。わしはな、戦いに苦しんだ後は癒しな『ぱわぁ』を補給せにゃならんのよ!そう、例えば猫耳な頭巾が可愛い、君みたいなおんにゃのこの胸に飛び込むとかさぁっ」
「卑しぃぃっ!!なんて卑しい女っ!!あ、あっち行きなさいっ、このっ、子宮馬鹿っ!!」
「うっほっ!なんて新しい罵詈雑言!ええよっ、それでええっ!もっと言ってもいいのよ!わしがあんたを味わえるならぁっ!」
「や、やだぁっ!こんな女に処女膜をぶち破られるなんて屈辱の極みよ!!ちょっと、外の衛兵!この変態精嚢野郎!何ぼさっとしてんの、さっさと助けっ・・・ひぃっ、胸は駄目ぇぇ!」
「ちょっと詩花!やめなさい!あなた、こんな事をしてただで済むと・・・ああもう!今日は吉日なの、それとも厄日なのっ!?」
ーーー俺、なんでこいつをパートナーにしたんだっけ。
もう考えるだけで頭が痛くなる。仁ノ助は幾分、いや幾時間か頭を抱えていたいと本気で思い始めた。しかし目の前の現状は、とりわけ新しき主がほとんど素の表情を出しながら奮闘するのを見て、放置できる筈が無かったのだ。
彼は戦で疲労を覚えている身体に再び鞭を入れるべく、自分の顔をぱちんと叩き、荀イクを押し倒さんとしている獣じみた相棒を睨み付けた。
ーーー数分後ーーー
「助かったわ。一時は本気で、大切な軍師を失ってしまうかと思ったわ。荀イクの才知の鋭さは何よりも代え難いから・・・」
「・・・なんで戦った後に、こんなに疲れなくちゃならないんですかね」
「結果論で言ってしまえば、あなたの監督が足りなかったのかもしれないわね。獣はしっかりと躾なさい。アレは危険よ・・・」
「は、はい・・・申し訳ないです」
俵のように雁字搦めとされ気を失っている錘琳を他所に、仁ノ助と曹操は疲労困憊した様子で息を吐いた。過失なき被害者二名を寝室に横たえた上で、二人は眩暈を覚えつつも、城下を見下ろせるバルコニーのような場所へと移動した。ここならば新鮮な朝の空気を浴びれる。兵達が見つけても、それとなく空気を察してくれるだろう。
曹操はすぐに気を立て直すと、やや非難が混じった視線で仁ノ助を見据えた。
「それにしても、仁
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