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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 五章
五章 導く光の物語
5-37激情と本懐
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「スクルト!」

 追い付いてきたクリフトの詠唱が響き渡り、魔力の鎧が一行を包む。

 魔力の補助を受け、バルザックの痛烈な攻撃を、揺らぎもせずにライアンが受け止める。

「なっ!?」

 丸太のような自身のそれと比べれば、あまりにも頼りなく見える女戦士の細腕と力で拮抗し、動揺するバルザックを囲い込むようにして、アリーナ、ライアン、トルネコ、少女が攻撃を仕掛ける。

「兄さん!あれが、バルザックなのか!?」
「そうだってよ」
「なんで、そんなやる気なさげなんだよ!」
「そんなこたあ、ねえけどよ。あんまりにも、小物臭が酷くてな」
「そんなのは元からだろ!」
「そうだったか?……そうだったな」
「とにかく、アリーナたちには悪いけど、(とど)めだけは譲れない」
「当たり前だ。行くか」
「あいや、待たれよ」

 決意も新たにバルザックに向かう兄弟を、ブライが止める。

「なんだよ、ばあさん。こればっかりは、譲れねえぞ」
「譲れとは言わぬ。ただ、わしにも一矢(いっし)報いる機会を、くれぬかの」
「殺すなよ」
「うむ。元より、わしでは殺せはすまいがの。行くかの」

 前衛陣の攻撃に、バルザックが弱り切ったところを見計らい、ブライが高らかに宣言する。

「皆の者。下がりなされ」

 声を荒げるでも無く、しかし凛としてよく通る老婆の声に、一同がはっとして距離を取る。

「ただ殺すばかりが、能では無いということじゃ。……マヒャド」

 たっぷりと間を取って放たれたそれが、冷気の呪文であったことに、バルザックの口元に嘲笑が浮かぶ。

 果たして、ブライの手元から放たれた激しい冷気は、バルザックにダメージを与えることは無く。
 バルザックの足元に集中して放たれたそれは、バルザックの下半身を凍りつかせて床に縫い止め、行動不能とした。

「な……!!なん、だと……!?」

 動揺し、闇雲に身体を動かそうとするが、既に力尽きそうなほど体力が落ちたバルザックに崩せるほど、最上級呪文は甘くない。

「うむ。良いぞよ、マーニャ殿、ミネア殿」
「なんだよ。見せ場は持ってかれたな」
「ありがとうございます。みなさんのお怒りも、お預かりします」
「うむ。頼むぞよ」

 マーニャとミネアが、それぞれ手元に火炎と、真空の渦を出現させる。

 バルザックがいよいよ動揺を深め、取り乱して命乞いを始める。

「ま、待て!やめろ!殺さないでくれ!一時は、家族のように暮らした仲じゃないか!」
「その家族同然の親父とオーリンを、てめえはどうしたんだったかな」
「ここでかける情けがあるなら、そもそも追う必要は無かったね」

 呪文解放時の威力をより高めるため、バルザックに歩み寄る兄弟。


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