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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 五章
五章 導く光の物語
5-37激情と本懐
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付いてきた三人は、少女の叫びにも立ち止まること無く、
異形
(
いぎょう
)
の魔物に突進する。
魔物の意図を察知しているアリーナは、しかし少女の呼びかけに応じることなく、あくまで攻撃を加え続ける。
魔物が厭らしく顔を歪め、大きく口を
開
(
ひら
)
いて、凍り付く息を吐き出す。
避ける気も無く攻撃を続けていたアリーナは、正面からまともに息を浴びる。
「アリーナ!」
「任されよ!」
「ちっ」
前に出ようとした少女を制し、ライアンがアリーナを横合いから突き飛ばして魔物の正面に立ち、鉄の盾で息を受け止める。
少女はアリーナに駆け寄り、至近距離で受けた冷気による凍傷を回復する。
マーニャが、叫ぶ。
「ライアン!
退
(
ど
)
け!」
ライアンが瞬時に跳び
退
(
の
)
き、直後にベギラゴンの火炎が魔物に向かって殺到する。
炎に包まれた魔物が悲鳴を上げ、一行は一旦距離を取って、態勢を整える。
「アリーナ!ちっと頭冷やせ!」
「少々、無茶が過ぎますな」
マーニャがアリーナを怒鳴り付け、ライアンも鉄の盾と、盾を構えた腕の表面が凍りついたのを、軽く腕を振って払いながら、苦言を呈する。
ライアンの腕から飛び散る氷と霜を見詰め、気まずそうにアリーナが呟く。
「……済まない」
「ライアン。治すね」
「この程度。……いや、
忝
(
かたじけ
)
ない」
一旦は治療を断ろうとしたライアンは、手の空くうちに治すべきと思い直し、少女の治療を受け入れる。
「わかったんならいいけどよ。……あれ、バルザックか?ずいぶんとまた、変わってやがるが」
「さあ。名は聞いていないな、そう言えば」
「確認しねえで殺すなよ。オレらの
仇
(
かたき
)
なんだからよ」
「悪い」
「おい!てめえ、バルザックか?」
マーニャの呼びかけを受け、炎に呼吸を阻害され咳き込んでいた魔物が、咳払いで息を整え、尊大に応じる。
「ふ……ふはははは!見違えたか!いかにも、私がバルザックだ!エドガンの息子よ、やはり、来たか!逃げ延びて折角拾った命を、
遥々
(
はるばる
)
こんなところまで、捨てに来るとは!全く、ご苦労なことだ!全く、愚かなことよ!」
時折咳き込みながら高笑いするバルザックに、マーニャが顔を
顰
(
しか
)
める。
「相変わらずの小物っぷりっつうか……。進化してねえか?」
「以前のことは、知らないが。小物ではあるな」
マーニャとアリーナの呟きに反応し、バルザックが激昂する。
「まだ、言うか!私を、誰より神に近付いた、この私を!!愚弄、するな!!」
「……小物だな」
「ああ、小物だ」
「あまり、挑発されませんように」
巨大な棍棒を振りかぶり、突進してくるのを、ライアンが前に立って、迎え撃つ。
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