才能と覚悟
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士官学校に入った?」
「僕は憎き帝国を……」
「憎いという理由で、君だけならともかく周りまで巻き込むなよ」
吐き捨てるような言葉に、テイスティアは小さく言葉を震わせた。
それまでどれほど怒られたとしても、嘲笑されたとしても、泣くまいと誓った思いがあっさり崩れ去った。自らの意志に反して流れる涙は、いくら拭おうと止まる気配はない。鼻の奥が痛んだが、やがてテイスティアは涙を拭うことを諦めて、アレスを睨んだ。
自分が選んだ道を否定されたままにいるのが嫌だったからだ。
睨むテイスティアを、アレスは真っ直ぐに見ていた。
先ほどまでの笑みすらも消して、テイスティア自身に向きあうように。
「変なことをきいた……別に理由なんてどうでもいいんだ。君が帝国を憎もうが、同盟を愛そうが――あるいは、その逆だろうが。そんな主義主張はどうでもいい」
「僕の、僕の父は……帝国に殺されました。それがどうでもいいことなのですかっ?」
「それで巻き込まれる方はたまったものじゃないな」
「それはっ!」
「上司が高潔だろうが、馬鹿だろうが、等しく彼らは部下に対して責任がある。それでも必ず人は死ぬだろう。味方を死に追いやる覚悟、敵に恨まれる覚悟が君にあるのかい。たかがワイドボーンごときを恐れる君に」
「……」
もはや再びテイスティアの口からは、言葉は出なかった。
否定の言葉も何も思いつかず、アレスを見る事も出来ずに項垂れた。
地面に落ちる涙をぬぐおうともせず、嗚咽する。
そんな酷くみっともないテイスティアの肩を、アレスは叩いた。
随分と軽く、優しい。
今までの攻める口調から一転して、優しげな口調が頭上から振る。
「別に君が嫌いなわけじゃない。ただ復讐という言葉だけで、実際に戦う事が怖いのであれば、やめて平和に暮らした方がいい」
「死ぬのが」
「ん?」
「死ぬのが怖くないんですか。自分の間違えが、味方を殺すかもしれないんですよ? それでもあなたは!」
「人並みには怖いさ。けど、それで自分が何もしないままで終わるのはもっと嫌だな。それなら、俺だって軍人にならずに平和に暮らすさ」
何とか反論しようと視線を周囲に回せば、コーネリアもローバイクも助けてはくれそうにない。アレスの言葉に若干の呆れこそあれど、彼に賛同する様子だ。
それでもテイスティアは視線を回して、ワイドボーンを見る。
最上級生は、赤い鼻を鳴らして見せた。
「何だ、貴様は。言いたい言葉があるのならば、他人に頼らず自分の言葉でいえ。だから、貴様は無能で、俺は貴様が嫌いなんだ」
取り付く島もなかった。
瞳をこすって、奥歯を噛む。
誰も味方もいない状況で、テイスティアが出来る事は――逃げることだけだった。
走りだした彼を誰
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