第三章 家路へ
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
しいかもしれませんね。それよりこれを期に、彼を締め上げドラッグの出所を調べ上げるべきだ。」
ケビンは裏路地の存在を知らない、彼はキングストンが平和な町だと思っている。街の上澄みだけをとらえ理想に生きていた。ケビンに今回のことは相談できないな、デイビットはそう思った。一度裏路地の存在をケビンが認知してしまえばゴロツキからの「お小遣い稼ぎ」ができなくなる。それ以上に、ケビンは自分を軽蔑し、糾弾するだろう。それだけは避けないといけない。
遺体を運び出す手はずが整いだしたのはデイビット達が現場を去る直前だった。
「身元引受人はいないようだが今回も死体安置所に置いとくのか?」銀のビニールにくるまれたバブルキットの死体を尻目にデイビットは尋ねた。
「そうするしかないだろ、この分じゃ埋葬の手筈も追いつかんだろうな。」ケビンは答えた。
死体を搬送する許可が下りたことを無線で確認したケビンは捜査用に使用していた手袋を外し、煙草を取り出した。彼はヘビースモーカーだった。現場での喫煙は望ましくないのであるが、この捜査後の一服はデイビット唯一の法外の行為であり、人間臭さの表れのようだった。デイビットはそれを見届け、ゆっくりと捜査車両へと歩みを進めた。デイビットは焼け焦げたバブルキットに触りたくはなかった、検察やドルジやケビンが捜査している間も、呆けているかのように脇で立っていることが多かった。
そんなデイビットの姿を見ていたのだろう、同じく手袋を外したドルジが腹をさすりながらこう切り出した。
「浮かない顔をしてるな、デイビット。どうした?なにか揉め事か?」
「いえ、ボス。別に大したことじゃないんですよ。昼に寄ったキングストンバーガーで新作が出たんですけどそいつがひどい味でしてね、それを思い出してたんですよ。」
彼はウィンクをしながらそう言った。
「そいつは知らなかった、今度是非食べてみんとな。この歳になると食べることが唯一の趣味だ。パクパクペロリ、こいつは絶品!ってな。オレンジマフィンは食べないのか?あれはいいぞ、フカフカの生地を頬張ってみろ、疲れもぶっ飛ぶ。」
ひとしきり捲し立てた後、さてと、とデイブは切り出した。
「お前はこの頃事務所に連泊だっただろう、一度ちゃんと家に帰った方がいい。詰まらんことに悩みすぎるのはお前の悪いところだ、デイビット。」
「後始末は州警察の連中に任せよう。せっかくの週末なんだ、奥さんをどこかへ連れてってやれよ。」
携帯灰皿をかちかち開け閉めしながらケビンが黄色いテープをまたいだ。言われてみればそうだ、自分はもう長いこと家に帰れていない。妻のローザは毎日家で一人、悪いことをしているということは自覚しているつもりだった。
秋の夜の肌寒い風を受けながら、枝はその葉をすべて落としてい
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ