崑崙の章
第20話 「ああ。すまん、伝えるの忘れていた」
[7/7]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
んなものは、ただのでまかせだ」
それが虚言であることは……彼の顔を見ればわかる。
左慈とて内心では彼を……北郷盾二を認めているのだ。
だからこそ……彼を利用するのに戸惑っている。
「彼を利用すれば……間違いなく彼は、私達に敵対するでしょうね」
「……そうだろうな。俺達はあいつの肉親……まさにもう一人の自分を殺すために利用されるのだから」
私も左慈も。
彼……北郷盾二が気に入り始めている。
だが、それゆえに……心が痛い。
彼の封印を解き、彼自身に……北郷一刀を殺させるために。
「…………」
「…………」
互いに無言だった。
だが……どちらともなく目を合わせる。
その眼は……覚悟を決めていた。
「……恨まれるのは、慣れている」
「……そうですね。私達は……『悪役』ですから」
私と左慈は寂しく笑う。
力を半分封印され、役割も限定された今の我々ができる唯一の事。
そして……北郷一刀を殺せるという、唯一の機会。
……彼を殺しても、すでに北郷一刀の存在は無数の世界に存在している。
一人殺したところで、多元世界には全く影響がない。
だがそれでも。
それでも、同じように分かたれた『于吉』と『左慈』という存在の全てが抱える、北郷一刀への恨み。
それを晴らす世界が、ひとつぐらいあってもいいではないか。
「……せめてあいつの封印が、完全に解かれるまでは」
「ええ、わかっています。ちゃんと協力しますよ」
それすらも……ただの身勝手な贖罪だとわかっている。
許してほしいとは言わない。
わかってくれとも言えない。
ただ、それが今の……『于吉』と『左慈』の存在理由なのだと。
言うことなどできもしないが……彼には知っていて欲しかった。
例え……それすら、傲慢だったとしても……
彼には……知っていて、欲しかった。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ