崑崙の章
第20話 「ああ。すまん、伝えるの忘れていた」
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……私が外へ出るときに使う術です。一種のテレポーターですね。今のところ巴郡の傍に設定していますが……漢中付近にした方がいいですか?」
「ぜひ頼む! これ以上皆を待たせたくない!」
彼は本気で急いでいるようだ。
まあ、ほぼ一年不在にしていたわけでもあるし、焦っているのだろう。
「わかりました……すぐ飛ばせますけど。準備はもうよろしいので?」
「すぐできるのか……助かる。于吉、まずは礼を言うよ。本当にありがとうな」
「いえ、私こそ……良い方と巡り会えました。北郷盾二……できれば、本当にお付き合いを」
「それはかんべんしてくれ。お茶や食事ぐらいならばつきあってもいいけどな」
「……まあ、今はそれでよしとしておきましょう」
いずれは、もっと懇ろに……なんて。
そんなこと、あるわけもない……ですよね。
「左慈。稽古、本当にありがとうな。密度の濃い修行が出来たと思う。お陰でずいぶんいろいろ思い出せたよ」
「フッ……まだまだ相手にし足りなかったがな。次に来るときは、もう少し鍛えておくことだ」
「機会があればそうするよ。負けっぱなしは嫌だしな」
……左慈。
貴方は……
「……名残は惜しいが、今も外の時間は進み続けているのだろう? 于吉、頼む」
「分かりました……」
私が呪文を唱え、その両手から光を放つ。
北郷盾二は、その光を浴びて――
消え去った。
「……行ったか」
「ええ。漢中のすぐそばに転送しました。季節が変わっていることに驚いているでしょうね」
「……お前はどうするんだ?」
「この術は、一日一度しか使えません。今日はここで休んでいきますよ。元よりそのつもりでしたし」
私が肩を竦めると、左慈は溜息をこぼした。
「おやおや……私と一緒ではご不満とでも?」
「……違う。そういう意味じゃない。俺は……」
「……避けなかったのではなくて、避けられなかった。そういうことですね」
「………………」
左慈は無言だった。
北郷盾二が無意識に……怒りに任せた一撃。
それは本来、左慈ならば避けるか受け止められるだろうと思った。
だが違う。
左慈は避けなかったのではなく、避けることが出来なかった。
それ程に速い……そして、仙人である左慈が気絶するほどに重い一撃だった。
「あいつの本当の力は……俺を超えているかもしれん」
「あなたを力で越える、ですか……北郷盾二、とんでもない男ですね」
彼が一度死にかける前に、左慈を圧倒した力……殺戮機械の力。
彼は無意識化で、その実力と本性をセーブされている。
それは後催眠とそれを封印した……高度な魔術によるものだった。
「彼の深層心理における封印は見事なもの
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