崑崙の章
第20話 「ああ。すまん、伝えるの忘れていた」
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つつ、呟いた左慈は。
「ああ。すまん、伝えるの忘れていた」
頭を掻いて、悪びれた様子すらなかった。
―― 于吉 side ――
「これが賢者の石になります」
「……でかいな」
私が差し出した賢者の石。
それを見て、ごくっと喉を鳴らした北郷盾二。
その塊は、拳大の大きさで大体一〜ニキロ前後。
賢者の石は、一gから約三十キロ前後の純金が生み出せる。
つまりこの塊は……それ一つで、三十トンから六十トン以上の金塊になるということでもある。
「これが十個……ここに保存してあるのは、これだけです。本当は、仙人界深部にある宝物庫にまだあるのですが……」
「……本来はそれを渡す気だった?」
「ええ。ですが、そこの封印を解くのに十日はかかります。つまり……」
「この後、三ヶ月以上も待ってはいられないからな。これで我慢しておくよ」
「……すいません、私自身もそのことをすっかり忘れていました」
私は、平身低頭に謝る。
仙人である私が……善意の言を違えたのだ。
正直、私のプライドも傷ついている。
悪意の言葉でなら、いくら違えてもよいと思っているが……さすがに自分が認めた相手への誠意の言葉を違えるのは、いささか堪える。
「いずれ、外の世界で宝物庫からの石をもっていきますので……」
「いや。それはいいよ……最低でも三百トンもの金塊ならば、十分国庫が潤う」
そう言って、彼は麻袋に賢者の石を入れていく。
現在の金の価値は一石(約三十一キロ)で、百二十四万銭。
つまり、全て純金にするならば、それだけで最低でも百二十四億となる。
洛陽周辺全ての年間予算は、およそ百五十〜二百億。
地方都市ならば十〜三十億程度。
つまりは、この拳大の石ころ十個で、大陸の年間予算に匹敵する資金にもなるということだ。
私が巴郡を一大交易都市にできたのは、ひとえに数百キロにも及ぶ賢者の石のおかげといえる。
「まあ、これだけでもここに来た甲斐はあった……左慈、もういいから立てよ」
麻袋の紐を締めつつ、北郷盾二がバツが悪そうにそう言う。
その言葉で、正座していた左慈がようやく立ち上がった。
その左頬を大きく腫らしたまま。
「悪かったな……瞬時に殴っちまった」
「いや……殴られて当然だ。悪いと思っている」
そういう左慈だが、どこか悔しそうにしている。
実際悔しいのだろう。
まさかあの左慈が、瞬時に殴られた上に気絶させられたのだから。
「さて……またあの雪山を降りなければならないのか。食料はどうするかな……」
「ああ、それならご心配なく。ちゃんと麓までお送りしますよ」
「ほんとかっ!?」
「ええ
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