崑崙の章
第20話 「ああ。すまん、伝えるの忘れていた」
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ろう劉備……桃香の治世を見てみたいんだよな)
そして最終的には、それを一人の個人の資質ではなく、制度による民衆自身の力で成し得ていければ――
だが、それとて問題がないわけではないのだ。
人は善なる生き物ではない故に。
(それでも……それでも俺達は理想を求め続ける。それが歴史というものだ)
まだ決まった先は見えなくとも、いつかは……
それは夢とも思える、希望の果て。
絶望と紙一重の、か細い道。
だけど、諦めることは許されない……人が生き続ける限りは。
人の叡智は、それすらいつかは乗り越えられると信じて。
「……?」
「……どうしました?」
「ん? あ……いや、なんでもない。ちょっと感傷的になっただけだ」
いかんいかん……益体もないことだった。
今できることを精一杯やらなきゃな。
「まあ、そろそろこちらの仕掛けは芽を出しそうですけどね……しかし、いいのですか?」
「? なにがだ?」
「ここで過ごしてもうひと月にもなろうとしていますよ? 大丈夫なのですか?」
「ああ、ひと月ぐらい問題じゃない……いや、さすがに今年度中に帰るって言ったから、そろそろ下山しないとまずいか」
「は? え、あの……知らないのですか?」
?
于吉が急に慌てだした。
なんのことだ?
「? なにがだ?」
「えっと……左慈、貴方まさか伝えてないのですか?」
「? なにをだ?」
「…………………………」
左慈の様子に、于吉が汗をだらだらと流し出す。
なんだ?
「……なんかあるの?」
「………………落ち着いて聞いてくださいね?」
左慈は覚悟を決めたように真顔になる。
「……ああ」
「この仙人界……ここはもうご存知ですが、異空間です」
「知っているよ。それで?」
「そして我々に限らず……仙人が何百年も生きられるという話を聞いたことはありますか?」
「ああ。だが、あの水の……不老長寿の水なんてのがあれば、当然だろ?」
まあ、あの水の存在自体がすでにファンタジーではあるが。
「……それだけじゃないんですよ。この空間は、外の世界とリンクしていますが……時間の流れが違うのです」
「……は?」
「竜宮城……浦島太郎の話を知っていますよね? あの竜宮城も仙人界の一つ、そういったら……わかりますか?」
りゅう、ぐう、じょう……しばらくそこで暮らした浦島太郎。
だが、地上に戻ってみると……
「お、おい、まさか!」
「……この世界の一日は、あちらの世界の十日になります。つまり、ここでのひと月……三十日は」
「さ、さんびゃ……」
于吉の神妙な表情。
俺の唖然と呆然が入り混じって、真っ白になった姿。
それを見
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