第11話「迷子」
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柄が3−Aの中では評判が良かったのだ。
頼りになる、優しい。ちょっと不器用な、男の人。
そんなイメージが彼女達にはあった。
だが、実際のタケルの私生活を覗いてみればこれだ。
人目もはばからずに土下座をしている。要するにたった三人の不良にビビッているのだ。あれならクラスのバカレンジャーの方が随分と頼りになる。
彼女達はタケルに憧れを持っていた分、がっかりも大きい。
「もう行こうよ」
「だね、見ていても気分悪くなるだけだし」
「うん」
だが、彼女達はなかなか動こうとはしなかった。
「これでゆるしてください」
街中で土下座をしてみせるタケルを爆笑していた不良たちに、マユがたからものを取り出した。元々自身のせいだという想いと、タケルが笑われているという事実が彼女の中では我慢が出来なかったのだ。
「ああ?」
無造作に取り上げられた飴玉にマユは体を震わせて、タケルは驚きで目を瞠った。
彼女なりの精一杯の誠意。
だが、それは一粒の飴でしかなく、不良たちからすれば何の価値もなく……。
いとも簡単に『たからもの』は不良の手からこぼれ落ち、地面を転がる。「あ」というマユの声が小さく漏れ、それに呼応するかのように一人の不良が下卑た笑みを浮かべてその足を振り下ろされ――
「――へ?」
ふと間の抜けた声が落ちた。
なぜか、その不良は宙に舞っていた。数秒の滞空の後、どさりと地面に落ち、そのままピクピクと体を痙攣させて動かなくなる。
タケルが今までの無表情から、さらに色をなくした表情で一言。
「消えろ」
「……て、てめぇ何しやがった!?」
我を失い、拳を振るおうとする不良たちに、あからさまなため息をついてみせる。タケルが無造作に距離を詰め、これまた大雑把に両手で彼等の体をドンと押した。
そのまま5Mほど地面と平行に、それこそ冗談のような吹っ飛び方をして見せた不良たち。
折り重なって壁にぶつかり動かなくなった。それを見届けたタケルは視線を落とす。たからものの破片を少しでも拾い集めようと地面を探しているマユが、だがその欠片すら見当たらず、「ああ」と今にも泣きそうな声を漏らしていた。
そんな彼女に、手を差し出す。
「落とし物だ」
「え?」
タケルの手の平に載っている物は確かに少女のたからもの。マユは信じられないものを見るように震える手でそれを拾い上げ、クシャリと破顔させた。
「……う」
「う?」
「うわ〜〜〜〜ん」
急に泣き出した。
今まで恐かったのだろう。「たからもの」が無事とわかり、ホッとしたのかもしれない。あるいはその両方か。
タケルは「よしよし」と
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